【コラム・冠木新市】1971年に始まったTV映画『仮面ライダー』シリーズは、来年で50周年目を迎える。この間、何度か映画化もされ、世界中に多くのファンを獲得してきている。仮面ライダーとは、世界征服をたくらむ秘密組織ショッカーが、本郷猛という青年を科学技術で改造しようとした怪人である。しかし、完全に改造される前に脱出、逆にショッカーと戦う正義のヒーローとなった。

仮面ライダーを作画した漫画家・石森章太郎は、バッタの目玉と髑髏(どくろ)を混ぜ合わせた顔をもつ不気味なキャラクターに仕立てた。放映当初の人気は今一つだったが、本郷猛が腕を高く上げ、「変身トゥーッ!」の気合いで仮面ライダーとなり、サイクロン号のバイクに乗り、自分と同類の奇っ怪な敵をライダーキックで倒すうちに、子どもたちに爆発的な人気が出た。

その後、仮面ライダー2号、V3と続々仲間が誕生し、現在に至っている。これらの仮面ライダーと怪人たちが戦いを繰り広げるロケは、30年ほど前から幾度となく、つくばセンタービルで行われきた。原始的でもあり近未来的でもあるセンタービルは、善と悪が陣地取りするのには絶好の背景なのだ。

私も『仮面ライダー』の撮影現場を度々目撃している。いや撮影だけではない。仮面ライダーは「まつりつくば」などのショーにも出演し、センタービルと一体感のあるお馴染みのキャラクターとなっている。また仮面ライダーのゲームにも、リアルに描かれたセンター広場やノバホールが出てくる。つくばで暮らす私には、現実と虚構が溶け合った奇妙な空間となっている。

特撮ファンは、茨城県魅力度最下位の報道に接したとき、おかしいと感じたはずである。センタービルは仮面ライダーの聖地として全国で認知されていたからである。

センタービル秘密改造計画が進行中?

日本全国が新型コロナで苦しんでいる最中、「NEWSつくば」の記事(6月26日掲載)を見て驚いた。センタービルの改造計画が進んでいたからだ。さらに、続報で広場に屋根が付けられると知ってあ然とした(6月28日掲載)。思わず「広報つくば」6月号を取り出し見てみたが、センタービル改造計画の記事はなかった。

これまで、市報では「総合運動公園計画」「クレオ再生計画」は大きく取り上げられてきた。それが今回はなぜか沈黙している。また、2年前には中心市街地活性化で騒いでいた市議がピタッと口を閉ざしている。最近、投げ込まれ始めた市議選用と思われるチラシでも、改造計画の件は無視されている。これは一体どうしたことなのか。情報を市民に知らせないようにして、なるべく秘密主義で改造計画を進めているのかと勘ぐりたくなる。

45周年記念『仮面ライダー1号』(2016)をレンタルビデオ屋で借りてきた。この作品では、本郷猛とともに悪の組織ショッカーも出てくるが、そこから分裂したノバショッカーなる組織も登場する。

ノバショッカーは「世界征服」は時代遅れと宣言し、「経済による支配」を考えるビジネス集団であり、日本の国と契約書を交わす合法的な(?)悪の組織なのだ。しかし単なる力まかせのショッカーをあざ笑いながら、力で攻撃する極めて矛盾した組織である。昭和の仮面ライダー1号は、平成の仮面ライダーと協力してノバショッカーを倒す。

つくばセンタービル改造計画を考えた人たちは『仮面ライダー』を見て育った世代であろう。いつの間にか正義の味方ではなく、ショッカー、いやノバショッカーみたいな大人になってしまったのだろうか。虚構世界の仮面ライダーは、これまでセンタービルで様々な怪人たちと戦ってきた。今度は、現実世界の仮面ライダーファンが、つくばセンタービルの聖地を守るために戦いを開始するのではないだろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)