【コラム・川端舞】日本が2014年に批准した国連の障害者権利条約では、国は障害児が一般的な教育制度から排除されないようにするとされている。日本には障害児が通う特別支援学校があるが、障害者権利条約では特別支援学校は一般的な教育制度の中には含まれない。障害のある子どもとない子どもが同じ場所で学ぶことを基本としている。

障害者権利条約が目指している教育を「インクルーシブ教育」と呼ぶ。私は障害を持ちながら、小学校から高校まで普通学校に通っていたが、インクルーシブ教育を受けたとは思っていない。特に小中学校の頃は、学校で周りに迷惑をかけないために、友達に手伝ってもらってはいけないと言われていたし、言語障害のある私の言葉を聞いてくれない先生もいた。誰かに直接言われたことは無いが、学校の雰囲気から「私は障害があるから、勉強だけはできないと普通学校に通えなくなるんだ」と思っていた。

障害者権利条約が目指すインクルーシブ教育は、障害の程度やどのくらい能力があるかを、障害児が普通学校に通える条件にしてはならないとされる。「授業についていけるなら」「一人でトイレに行けるなら」など、何かができるかどうかで、障害児が普通学校に通えるかどうかが変わる教育は、インクルーシブ教育に対して統合教育と呼ばれる。

一定の条件をクリアできないと、障害児は普通学校に通えないという考えが学校現場に広まってしまうと、障害のない子どもたちも、「周りと違うのは悪いこと」「できないことを手伝ってもらうのは悪いこと」というような息苦しい考え方になってしまうだろう。

すべての子どもが尊重される教育

反対に、障害のある子どもとない子どもが同じ教室で学び、できないことは友達同士で助け合う環境だったら、障害のない子どもも「できないことは周りに助けを求めていいのだ」と思えるようになるだろう。

そのような環境は障害のある子どもだけでなく、障害のない子どもも安心して必要なサポートを受けられ、自分の意見を表現でき、主体的に学校生活を送ることができる。インクルーシブ教育は、障害のある子どものためだけでなく、すべての子どもが互いに尊重し、価値を認め合うことが目的とされなくてはならないと、国連も述べている。

国連の考えでは、単に障害のある子どもを普通学校に通わせるだけで、現状の普通学校で行われているカリキュラムや指導方法を障害のある子どもでも参加しやすいように変更しなければインクルーシブ教育とはならない。学校のカリキュラムなどを変更するには長い時間がかかるだろう。しかし、普通学校が障害のある子どもにとって過ごしやすい環境になったら、障害のない子どもにとっても過ごしやすい場になるだろう。

子どもたちに関わる様々な立場の人が知恵を出し合って、障害の有無にかかわらず、全ての子どもが安心して過ごせる学校を少しずつつくっていければと思う。(つくば自立生活センターほにゃらメンバー)