【コラム・吉田礼子】今年の紫陽花(アジサイ)は例年より鮮やかに感じられる。梅雨空にピンクや紫の花の色は一服の清涼剤。空梅雨(からつゆ)の年には瑞々(みずみず)しさが失われ、気の毒なくらい萎(しお)れるが、今年は恵みの雨。紫陽花に元気づけられる。梅雨ならではの仕事がある。梅仕事である。

先ずは梅シロップ(梅ジュース)から始める。固い青梅が最適で、日にちが経っても充分おいしくいただける。酷暑を乗り切るため、原液に氷を入れ、炭酸で割って何度も助けられた。簡単に作れる一品。お忙しい方にもお勧めしたい。

次は梅干し。昨今は、健康維持のために塩分摂取量を減らすことが求められ、梅干しの消費量は減っている。昭和40年代ごろまでは、30%ぐらいの塩分量はよく聞いた。最近は、減塩しても、美味しく傷まない梅干しを作る。

以前、ある梅干しメーカーに5%の減塩梅干しを、どのように作るのか問い合わせたことがある。先ず20%以上の塩で漬け、その後塩抜きをして、ハチミツなどで味付けをして市場に出すということだった。

でも、昔の梅干しを求める声も多い。義母も塩分16%に落ち着いた。高温多湿の日本の夏の気候風土に必要な食品である。昭和生まれの私たちには、日の丸弁当や、梅干しを具に醤油の焼きおにぎりを作ってもらったことが思い出される。

ラッキョウ、ジャムなどの保存食も

梅雨には、ラッキョウ、ピクルス、ジャムなどの保存食作りもある。菌類が活発に動くシーズンは、パン、ピッツア、イーストで作るシュテンゲル(棒状クラッカー)作りにも最適だ。

コロナ禍で、自宅での危機管理のひとつ、食料の調達・備蓄について検証する機会を得た。夫の実家は農家だが、32年前に祖母が亡くなったとき、分家の叔父が米1俵を持って来てくれた。独立した家は備えとして1俵は手を付けないでおく。本家がいざというとき持っていくためと、飢饉などの災害用に、である。

昔は、新米が出来たら1回は食べても、古米から食べていくので、正月を超えないと新米は食べられなかったとのこと。味噌、醤油、塩、砂糖、梅干しなどのほか、乾し椎茸、豆類、麩(ふ)、昆布、かつおぶし、切り干し大根といった乾物の備蓄も大事だった。

これらの使いこなし方の伝承も、昭和生まれの責務と痛感している、同時に、新しい生活様式も取り入れるため、若い人の力も貸してもらいたい。そんなことも考えながら保存食作りに勤(いそ)しんでいる。(料理教室主宰)