【コラム・中尾隆友】昨年、茨城県議会が茨城空港の名称を「北東京空港」に変更することを提案したが、多くの県民がこの名称に疑問を持ったことだろう。非常に浅はかな名称変更案だったと思うのは、名称に茨城の特色が表れていないばかりか、東京への距離の近さだけを謳(うた)ったものだったからだ。

最終的には専門家の意見を聞いたうえで、「茨城空港」の名称を継続することとし、英語名では「東京首都・茨城空港」「東京北空港」「首都茨城空港」などとする折衷案が出されたが、いかにもお粗末なドタバタ劇だったと思う。

県議会には失望している。提案する前に最低限やるべきことをやっていないからだ。マーケティングでデータを揃えてから、茨城の強みは何かを考えるという発想があった方がよかった。

県や各自治体のPR能力が問われる

東京への近さをアピールしたかったのは、魅力度ランキングで全国最下位だというコンプレックスから来ているのかもしれない。以前も申し上げたように、茨城県の魅力度が低い理由として、経済性や居住性が優れているため、魅力度を磨く必要性に迫られていなかったという点が挙げられる。

人々はさしたる定義がないなかで「魅力度」と問われると、まず自分が観光地として行きたいところはどこか、といったことを思い浮かべる。茨城にも牛久大仏や袋田の滝といった観光スポットは存在するが、これらは茨城のイメージを決定づけるほどの強いイメージを持っていない。

たとえば、研究機関が集積するつくば市の「科学技術」を前面に押し出していくというのはどうだろうか。つくば市では2016年にG7の科学技術大臣会合、2019年にG20の貿易・デジタル経済大臣会合が開催されている。私はG7とG20の双方で会合が開かれた都市を他に知らない。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、都心でリモート勤務が増加し、地方へ移住するハードルが低くなりつつある。企業が地方へ移転する動機付けも強まっている。これまで以上に、県や各自治体のPR能力が問われる事態になっているのだ。そのことを強く意識して、成果を出してもらいたい。(経営アドバイザー)