【コラム・古家晴美】タケノコというと、5月に掘り上げる孟宗竹(モウソウチク)を思い浮かべる方が多いかと思うが、今回はそれ以外のタケノコについて取り上げてみたい。全国的に見ると、日本には131種のタケ類およびササ類が存在する。このコラム「保存食への思い 多様な食材を楽しむ」(11月27日付)紹介したタケノコの塩漬けは孟宗竹だが、県南ではそのほか、淡竹(ハチク)、真竹(マダケ)がある。この3種が国内で採取される有用種トップ3だ。

かすみがうら市安食では、タケノコのことをよく知っている人ならば、贈った時に最も喜ばれるのは「ハチク」だと言う。これは軟らかくエグミがないので、茹(ゆ)でてあく抜きする必要がない。下茹(したゆ)で不要なので、タケノコの風味が残っていて美味しい、手間いらずというのも人気の理由かもしれない。

孟宗竹のように鍬(くわ)で地面から掘り上げるのではなく、上から40~50センチの部分を鎌(かま)で刈り取るか、手でもぎ取る。煮物にもするが、縦に薄切りにしてみそ汁に入れるのが最も美味しいとのこと。

一方、阿見町大室でマダケの竹山を所有している方は、このタケノコは細くて小さく手間がかかるので、食用にはあまり使わなかったと言う。ただし、繁殖力が非常に強く、春に3~4回刈り取りしないと1年で竹山になってしまうので、手入れをしないわけにはいかない。

私が刈らせていただいたのは、竹藪(やぶ)ではなく日が照り付けている平坦な草地だった。以前、そこは梨畑だったが、梨の栽培をやめたら上の竹山から竹が根を伸ばしてきて、マダケが毎年出るようになったそうだ。

昔は竹で小遣い銭稼ぎ

現在では、迷惑な存在になってしまった竹だが、戦後、農家でコンバインが導入されるまでは、ご年配の方のよい小遣い銭稼ぎになっていた。稲刈りをした後に稲を干すオダカケの道具として活用されていたのだ。

稲をかける部分のノセ(横棒)には長いマダケが必需品とされた。孟宗竹では節が細かく稲が引っ掛かり、また重いので支えきれなかったからだ。ノセを支える3本のオダアシもマダケだ。これらの資材は、その役目を終えると縁の下に濡れないように大事に保管され、数年間使うことができた。

稲刈りが間近になると、農家から注文が入り、おじいさんは竹を伐(き)ってから枝を丁寧に払い、節を滑らかに加工し始める。乾燥せずに青竹の状態で売り渡すが、秋以外の季節の伐採(ばっさい)は、竹の使用期間を縮めるということで、伐採は秋には限られていた。オダガケのほかに、物干用の竹竿やクネ(竹垣)など戦後の農村生活で重宝されていた。

現在、全国的に竹林の管理が環境問題となっている。メンマを食べる以外にも、タケノコや竹について考えてみる時間を持ちたいと思う。(筑波学院大学教授)