【コラム・浦本弘海】とある会社の一コマ。

先輩「この債権は商事債権じゃないし、時効は…10年だな。きちんと管理しないと」

後輩「先輩、改正民法が今年(2020年)4月1日から施行されてるんですよ、この債権ならいまは5年です」

先輩「な、なに~!」

民法が2017年に大改正されました。この大改正された民法(改正民法)が2020年4月1日から施行されています。ビジネスの現場でも改正民法が意識されはじめました。そこで今回は、主要な改正のひとつ、消滅時効の改正について取り上げます。

ところで、そもそも消滅時効というのは、権利者が一定期間、権利を行使しないと権利が行使できなくなる場合があるという、(権利者にとって)残念な制度です。根拠のひとつは「権利の上に眠るものは保護に値せず」というもの、キビシー。

それでは条文を(原則だけ取り上げていますので、例外にご注意ください)。

●改正前

第百六十七条 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

(以下略)

●改正後

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

(以下略)

というわけで、改正前の民法では消滅時効の期間は原則10年でしたが、「知った時から5年」が追加され短期化が図られました。

刑事ドラマの「時効」にも要注意

また、改正前の民法には職業別短期消滅時効というのがあり、宿泊料は1年だったり、弁護士報酬は2年だったり、各種資格試験の受験生を悩ませていたのですが、短期化の一方でこれらは廃止されました。

商行為によって発生した債権(商事債権)は、商事消滅時効(商法522条)によりもともと5年だったのですが、この規定も削除され改正民法が適用されます。

なお、とても細かい話ですが、改正民法施行日(2020年4月1日)前に債権が生じた場合は、原則として改正前の民法が適用されます(例外に不法行為に基づく損害賠償請求権)。

ところで、むかしの刑事ドラマなどで、たまに殺人罪の時効が15年(あるいは25年)というシーンが出てきます。

刑事A「ふう、これでようやく犯人を逮捕できるな」

刑事B「先輩、今日で事件から丸15年。時効です!」

刑事A「な、なに~!」

ここでの時効は公訴時効というもので、公訴時効の期間が経過すると被疑者を起訴することができなくなります。

ちなみに「むかしの刑事ドラマ」としたのは、公訴時効を定める刑事訴訟法もやはり2010年に改正され、人を死亡させた罪であって死刑に当たる罪(たとえば殺人罪)について公訴時効が廃止されています。

小説やドラマで法律ネタが出てきた場合、法律が改正されていることもあるので、鵜呑みにするのは要注意なのです。(弁護士)