【コラム・玉置晋】僕は人工衛星運用というちょっと特殊な仕事の近くで働いています。宇宙開発というと、ロケット打ち上げや衛星開発がニュースになりやすいですが、最も継続して絡むのは衛星運用です。

人工衛星運用で一番イメージしやすいのは、地上から衛星に命令を送る人でしょう。他にもいろいろな仕事があって、地上から衛星に向けてアンテナを動かす人、衛星がどこを飛んでいるか難しい計算をする人、衛星が正常に動作しているか専門的な知見をフル動員して確認している人(僕はこれね)、衛星から送られてきたデータを有益な形に加工する人―など、たくさんの人に支えられています。

僕が人工衛星運用という仕事を強烈に意識したのは、2003年10月、太陽で大爆発(太陽フレア)が連発したときでした。ハロウィンの時期に起きたので、宇宙天気界隈では「ハロウィン・イベント」と呼ばれています。このときの日本の衛星の通信途絶のニュースは、僕に衝撃を与えまして、「こりゃあ、宇宙天気的に人工衛星をまもらんといかんなあ」という思いを持って、今に至っております。

現代社会は衛星に大きく依存

人工衛星運用者は、社会の機能を維持する「エッセンシャル・ワーカー(Essential Worker)」です。現代社会は、地球観測や通信・測位をはじめとして、衛星に大きく依存しています。ゆえに衛星の運用体制は、縮小する可能性はあれど、継続させる必要があります。

コロナ禍で社会のみんながリモートワークに移行する中でも、人口衛星運用者は24時間体制でシフト勤務をこなしています。最前線でがんばっている彼らは(そして私も)、実に誇らしい仕事をしていると思います。どうか、みな元気にこの状況を乗り切りましょう。

人工衛星運用。地味だけど大事な仕事の一つとして、みんなに知ってもらいたいですね。(宇宙天気防災研究者)