【コラム・及川ひろみ】環境省による里地里山調査は2005年に始まり、現在、4期目の調査を行っています。昨年11月には、2005~17年の調査報告書が、環境省と市民団体の間に立ち取りまとめを行う(公財)日本自然保護協会から発表されました。

この中で明らかになったことは、身近にごく普通に見られた生き物が急激に減少していることです。たとえばチョウでは、全体の約4割もの種が絶滅危惧の評価基準の一つである減少率(10年で30%)になっていることが明らかになりました。チョウ以外でも、野鳥、ノウサギ、テン、ホタル、ヤマアカガエルなど広い分野で、その傾向が見られました。

WWF(世界自然保護基金)の「生きている地球レポート2018」では、「過去40年間で野生生物の個体数が60%減少」と報告されています。また、2019年国際機関IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学―政策プラットフォーム)は、「100万種が絶滅の危機」という衝撃的なメッセージを出しました。日本自然保護協会の報告書も「普通種が危機的な状況」と述べています。

行政も里山保全に積極的関与を

里地里山は、原生的な自然と都市との中間に位置する里山が集落とそれを取り巻く2次林、 それらと混在する農地、ため池、草原などで構成されています。農林業などに伴う様々な人間の働きかけが、1000年以上にわたり持続的に行われてきました。人の手が加わり続けることで維持されてきた林、田んぼ、小川、ため池など多くの環境要素が集まり、日本の面積の40%を占めていると言われています。

しかし、農業も暮らしも里山に依存することが少なくなった近年、里山には人の手が入らず放置され、人との係わりが激減したことで里山特有の生物が減少し、レッドデーターとして扱われる種(植物55%、動物49%が里地里山に分布)が多く存在しています。調査では、里地里山がさらに住宅地などに変容していることで、身近な生き物の急減を招いていることが明らかになりました。

現在、各地で里地里山の保全活動が行われ、市民、行政、企業、研究者などが一体となって取り組んでいます。しかし、保全に関する国の予算は大変少なく、都市近郊では里地里山を公有地にすることも難しいのが現状です。当会では、公有地化とともに、行政も積極的に保全にかかわりを持つよう願い活動を続けています。(宍塚の自然と歴史の会代表)