《くずかごの唄》3 交通事故ボウシ・転倒ボウシ作戦


茨城県は、老人の交通事故件数が多いらしい。

田んぼに水を引く。上の田、中間の田、下の田。それぞれの持ち主がいて、どの田にも公平に水が流れるようにしなければならない。茨城には今も、田んぼの「農村の文化」が残っていると思う。みんなと一緒に何か行うのにかけては誰も上手だが、一人で行動すること、目立つことが嫌われる。

お年寄りの服装を見ても、皆と同じ色、形にしないと気がすまない。黒や灰色ばかり。少し明るい色の上着がほしいと思って、洋服屋さんを探したが、どこも同じ黒い色ばかりだった。

黒い服を着て、冬の夕方、薄暗い道路を、信号を無視して渡ってしまう。これでは交通事故が起らないわけがない。どうしたらいいだろう? 交通事故ボウシ、転倒ボウシをかねて、帽子の飾りを造ってみよう。

昔、イタリアの貴族は、競って、帽子の飾りにお金をかけたらしい。私も貴族の一人になったつもりでいる。お金はかけられないが、時間とアイデアをかけてみよう。昔、亭主が着けていた派手なネクタイ。沖縄の人から頂いた貝殻。トリの羽。着物の端切れ。少し、明るく、反射して見える雑多なものを集めてきて、「帽子飾り」を造ってみた。

90歳の誕生日を迎えた友には、亀城公園の樹齢500歳のシイの実を拾ってきて、リボンに貼り付けてプレゼントした。私はいま真心こめて、「転倒ボウシ」を願いながら、古ネクタイにどんぐりを貼り付けている。(奥井登美子)