《土着通信部》2 名木・古木指定制度の現在 ㊤

鹿島神社(土浦市右籾)のムクロジ。実は熟れて落果を待っている

土浦市右籾の鹿島神社にムクロジの木がある。銀杏によく似た実をつける。寒くなると実は乾燥し、ベール状の皮殻をまとって落果する。中には黒い種子が入っていて羽根突きの球―羽子(はご)になる。

頼まれてバス停「右籾神社前」付近まで実を拾いにいった。巨木はすでに葉を落とし、果実は飴色に色づいていた。直下のごみ集積場に落ちた実の大半は踏みつぶされていたが、枝の高みにはまだ多くが残っていた。

無事な落果を探して根元付近を見やると、「鹿島神社のムクロジ」は土浦市指定の名木・古木であることを示す銘板が目にとまる。1996年に指定された第54号で、樹高22m、胸高周2.01mと記されている。

銘板を最後まで読むと「所有者に断ってから見学してください」と土浦市からの断り書き、十分に観察してから気がついた。こんな屋外で、しかも天下の公道沿い、所有者は右籾町の「宮本某」と書いてあるが連絡先の記載はない。

右籾にはもうひとつ、日先(ひのさき)神社がある。神職はたしかミヤモトさんと言ったはずだ。関係先ならば、実の採集を断わろうと思って社務所を訪ねた。はたしてミヤモトさんは鹿島神社の管理も兼ねていた。

日先神社はご神木のスギをはじめ巨木だらけで、ここにも土浦市指定名木・古木があった。第2号(1994年指定)「日先神社のクヌギ」は、樹高26m、胸高周3.3mと形状が記録されている。樹齢までは分からないが、周囲の杉木立を圧するような威容を誇っている。

しかし大ぶりになり過ぎた枝の一部が落下している。神社では他にツネ、キャラボクが同様の指定を受けていたが、指定から約20年経ち、ツネはすでに枯死し、キャラボクも危機的状況にあった。

いったい名木・古木の指定制度とは何なのだろう。ミヤモトさんは指定の特典はないという。

土浦市が条例で、名木・古木指定要綱を制定したのは1993年のことである。国、県、市の天然記念物に指定されている樹木や公園や学校などの公共管理分は除き、民間・在野のものに限って「名木・古木」を選定し、所有者の申請に基づいて指定する制度、所有者には適正な管理を条件に1本当たり年間5000円の補助金を交付した。

まれな樹種を対象とし、推定樹齢が100年以上あり、樹姿に格調があることなどが要件で、市は選定のための調査を民間人3人に委嘱した。高校の生物教師だったり造園業を営んだりで植物に精通する顔ぶれ、いずれも当時60代だった。調査員は毎年20本ずつ、5年をかけて100本を選び、以降は保存状態を見ながら、対象木の入れ替えなどを担うことになった。

その制度がいつの間にか休眠状態になっていた。条例じたいは廃止になっていないが、当局に問い合わせると「運用の記録がない」といい、指定した木々の台帳すら残ってなかった。(次回=12月19日掲載に続く)(相沢冬樹)