【コラム・先﨑千尋】中国・武漢が発生地とされる新型コロナウイルスによる肺炎の情報は、毎日の新聞・テレビにいっぱいだ。中国だけでなく、日本政府も拡大の防止に躍起となっている。思わぬところから感染者が出ており、旅行や買い物にも影響が出ている。中国からの客も激減し、観光地では頭を抱えているようだ。

そんな折、長野県で医者をしている友人から驚きのメールが入ってきた。「本当は怖いダイヤモンド・プリンセス(事実上の監禁船)」という見出しで、コロナウイルスよりももっと怖い話だ。

「一流のディーラーがエスコートするテーブルゲーム。多彩な種類のスロットマシンをそろえ、バーも併設した、プリンセス・クルーズ自慢の本格的なカジノ。テーブルゲームは5USドルから、スロットマシンは1セントからと気軽に楽しむことができます。カジノが初めてという方、新しいゲームにチャレンジしたい方はレッスンを受けることもできます。専門のスタッフが親切丁寧にルールやマナーをご案内します」

これはクルーズ船のホームページからの引用である。海外クルーズ旅行中の「暇な時間をカジノで遊ぶ」という、賭博初心者のハードルを下げる悪魔の誘惑ではないのか。

日本船籍であれば、日本国内と同じで、船内で現金を賭ければ賭博罪になる。しかし日本から発着する外国船籍(アメリカのカーニバル社)のダイヤモンド・プリンセスでは、日本の領海を出れば外国と同じ。日本の刑法に違反していても金を賭けたカジノで遊ぶことができる。それだけではなく、日本の領海外の船内なら、賭博だけでなく、禁止薬物も売春も合法的に遊べる仕組み、と友人は伝える。

クルーズ船の正体を挙国一致で隠す

わが国では、船内で今回のようなコロナウイルスの感染者が大量に発生すれば、会社の社長や重役が記者会見を開き、頭を下げるのが当たり前だ。しかし、今回はダイヤモンド・プリンセスを所有するカーニバル・ピーエルシー社の関係者は誰もメディアに出てこない。日本政府も何も言わない。

カジノを含む統合型リゾートを作るIR法を通した自民党や誘致に熱心な横浜市の林文子市長が何も言わないのは当然だが、カジノ法案に反対した野党もマスコミも沈黙している。クルーズ船のホームページを見れば、カジノで遊べることがすぐにわかる。クルーズ船の正体を挙国一致で隠すというのは、異様な光景ではないか。

友人のメールによれば、カーニバル社はアメリカのカジノの胴元だという。カジノ賭博に免疫がない我が国の小金持ちは、プロのばくち打ちにとって赤子の手をひねるようなもの。クルーズ船の母港が横浜だというのも、IR法と裏でつながっているのでは、と勘繰りたくなる。

今回の新型肺炎で厚労省の防疫体制を仕切る官僚トップが、ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授のiPS細胞の政府助成金の打ち切りや、安倍首相補佐官との豪華不倫出張騒動などで問題を起こしているのには絶句。忖度と隠蔽だけに特化しているこの国は確実に滅びる、というのが友人からのメールの締め。いやだねえ、この国に住んでいるのは。他の国だって似たりよったりではないか、という声が聞こえるが。(元瓜連町長)

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