【コラム・浅井和幸】人には、他人にほめてもらいたい、よい評価をしてほしいという欲求があります。それを達成するために、日々、涙ぐましい努力をしているものです。自分を向上させたり、他人に喜んでもらえるようにする努力ならば、良いことだと思います。無理のない範囲でならばですが…。

しかし、それとは逆の方法で努力することも多いものです。例えば、嘘をつくこと。出来もしないことを言ったり、持ってないのに持っているように言ったりすることです。嘘がばれないようにさらに嘘を重ねていくと、とてもつらいことになるでしょう。

また、自分の知り合いや持ち物などを自慢して、さも自分が「すごい」人であるかのように振る舞って、達成することもできます。偉い誰かと知り合いであることが自慢の人もいるでしょうね。すてきな服や素敵なアクセサリーも、よい評価につながったりするかもしれません。

周りを下げ自分を上げる

しかし、もっとやってしまいやすく、危険な方法があります。それは、周りを下げることで、自分の評価を上げる方法です。他人をバカにすることで、自分が頭のよいことをアピールする。誰かの悪口を言うことで、その人の評価を下げ、自分の評価が上がった気持ちになる。美味しいものを食べたことを話すよりも、どこで食べた物はまずかったと言う方が、味が分かっている人のようにアピールできます。

これらを繰り返すと、次のような評価が積み重なっていくことになります。「この人は、周りを悪くしか評価できない人で、いつ自分も悪口を言われるか分からない人だ」と。少なくとも悪口を言っているときは、言っている本人も聞いている相手も「悪いこと」をイメージしていますので、心身にストレスがたまりやすいものです。

福祉や教育など、何かしらの支援をしている人でも、他の支援のダメなところを挙げて、それに比べて自分がやっていることは素晴らしいといった論調が多く見られます。デメリットだけを挙げて、メリットの部分は見ない。そうすることで、デメリットを見つけられる自分は評価に値する人間であるとアピールをします。

次々と新しい言葉をつくる

また、次々と新しい言葉をつくりたがる人もいます。今までの言葉や定義を悪者にして、それに比べ、私の考えて行っている〇〇法は素晴らしいといった具合です。

どのような方法にもメリットとデメリット、作用と副作用、長所と短所があるものです。一方が完全に上で、もう一方が完全に下であるということは、ほとんどありません。しかし、知識が浅ければ浅いほど、白黒つけて、自分が上であると考えたくなるものなので、お気を付けください。

物事をバッサリ切れることは、格好よく爽快なものです。しかし、それは事実を表面だけ見て分かった気になってしまう、禁断の甘い果実のようなものかもしれません。(精神保健福祉士)

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