【コラム・坂本栄】2017年秋にJR土浦駅前にオープンした新市立図書館の初代館長、入沢弘子さんが3月いっぱいで退任するそうです。17年春から3年間の任期が切れるということですが、あと3年は居てほしいと思っていただけに残念です。次の仕事も広報関係とのこと、新フィールドでの活躍を祈念しております。

与えられた2つのミッション

入沢さんは大手広告代理店を中途退社してつくば市役所に入り、市の魅力や売りを発信するシティプロモーションと報道対応の仕事を3年半勤めました。土浦の図書館長に転じたのは、当時の市長が「新図書館をテコとした駅前の賑わいづくり」を構想していると知ったからだそうです。広報のプロとして血が騒いだのでしょう。

図書館のマネジメントは地味ですが、旧市街地の活性化を重要施策に掲げていた前市長は、新施設に図書館本来の機能だけでなく、賑わいづくりの役割も持たせたいと考え、広報のプロを採用したと聞いています。2つのミッションをこなすために、入沢さんは司書の資格も取り、肩書きは「土浦市立図書館長・市民ギャラリー副館長・市広報マネージャー」に膨れ上がりました。

洗練されたデザインの建物、使い勝手がよい内部構造といったハードに、催し物などのソフトをうまく組み合わせ、入沢さんは新図書館を土浦の名所に仕上げました。次々打ち出す企画は大変ユニークで、NEWSつくばも喜んでお手伝いしました。具体的には本サイトの「いま土浦が面白い『本のまち』が起動」(2019年7月15日掲載)をご覧ください。

平凡な施設にならないか心配

ご苦労もありました。公務員は「守旧」の傾向がありますから、シティプロモーションに職員を引っ張り出すのは大変だったようです。イベントの企画は仕事の増加につながりますから、抵抗もあったようです。広報のための館長名ネット発信には、否定的な反応もあったようです。民と官の仕事文化の違いとでも言ったらいいでしょうか。

前任のつくば市ではこんなこともありました。記者発表の不手際や市幹部の不正確な説明で記者との関係が険悪になったあと、市と記者団の関係修復を図ったのは入沢さんでした。こういったプロセスもあって、つくば市のプレス対応は大分よくなりました。

話を土浦に戻します。今春には駅ビル内にホテルがオープン、市観光の目玉「つくば霞ケ浦りんりんロード」の仕掛けがプラスされます。来春には県立土浦一高が「中高一貫校」になり、教育環境が変わります。駅前施設の2つの機能がこれまで以上に求められるわけで、仕事請負人が去ったあと、図書館が平凡な施設にならないよう、ウォッチしていきましょう。(経済ジャーナリスト)

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