【コラム・中尾隆友】今回は前回(1月31日掲載)の続きです。

第2に、研究や人材育成において、全国の大学や企業といっそうの協力・提携を深めながら、オープンイノベーションを推進していくということだ。昨今の大学は運営資金の減少から研究資金も不足がちであり、既成の枠組みにとらわれない研究をしようとしたら、とてもひとつの大学では研究を続けるのが難しくなってきているからだ。

そうであるからこそ、高いレベルの研究ができる仲間づくりが重要な意味合いを持っているのだ。大学と大学、あるいは大学と企業の共同研究や人材交流がますます増えていけば、大学と大学、あるいは大学と企業の双方の競争力向上やイノベーションに直結する成果が出てくる可能性が高まっていくはずだ。

以上の2つの改善点を踏まえたうえで、私が筑波大学に望む新しい大学像とは、学類(誤解を恐れずに言えば、筑波では「学部」が「学類」に相当する)ごとに縦割りになっている体制をもっと緩めて、学生が学類をいっそう自由に横断できる仕組みをつくってほしいということだ。大学を卒業するまでにひとつの学士だけでなく、複数の学士を修めることができるような体制をつくってほしいのだ。

文系と理系が融合したハイブリッド人材

たとえば、経営学とシステム工学の両方に精通する学生がいたら、社会に出て何かおもしろいことをやってくれると思えるのではないか。分野が違う複数の学問を修める学生を育てるには、複数の学類の教授陣が協力してカリキュラムや授業をつくるなど、学類を越えた横断的な取り組みが欠かせないだろう。

今のところ日本では、企業が求める人材は理学部や工学部の需要が強く、文系より理系のほうが優位な状況がしばらくは続きそうだ。しかし私が予想する未来では、文系と理系が融合したハイブリッド系の人材がもっとも重宝がられるようになるのではないかと考えている。

スマートフォンや自動運転車のように、イノベーションが異分野の融合から生まれるという事実から判断すれば、ハイブリッド系の人材が増えていけば、イノベーションが生まれる可能性はいっそう高まるはずだからだ。

これからの新しい時代では、大学のなかにも文系と理系の両方の要素を併せ持った学部や学科が誕生することを期待している。文系の感性を持った思考力と理系の論理で構築した思考力が組み合わさることによって、新しいタイプの人材を社会に送り出すことは、大学の存在意義をきっと高めてくれることになるだろう。(経営アドバイザー)

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