【コラム・中尾隆友】経済のグローバル化に続いてデジタル化の波が押し寄せている中で、企業は新卒一括採用を見直し、通年採用を拡大しようとしている。その流れと並行して、定年の延長が着々と進み、即戦力を求める中途採用がメジャーな採用になっていく見通しにあるのだ。

すなわち、新卒一括採用の重みが徐々になくなっていき、国公立か私立かにかかわらず、大学の役割と存在意義が問われる時代が到来するということだ。

日本の大学の最大の問題点は、学生が入学するためには必死で勉強するが、入学後はあまり勉強しなくても卒業できてしまう点だ。

そこで日本の大学を改革するために必要最低条件となるのは、卒業要件を厳格化し、勉学に励む学生しか卒業できない仕組みに改めるということだ。大学が卒業生に対して専門性に相応(ふさわ)しい知識や思考力を担保できなければ、日本の経済・社会の発展に貢献することなど、できるはずがないからだ。

縦割りで閉鎖的な組織を変えよ

その上で、縦割りで閉鎖的な組織を変えていくことも欠かせない。大学のカリキュラムは基本的に学部ごとの縦割りになっていて、一部を除き、学部をまたいだ横の連携が皆無に等しいので、高度な人材を育成するための大きな障壁になってしまっているのだ。

たとえば、日本の大学がAI人材の育成で遅れを取っているのは、理学部や工学部といった昔からの学部編成に分かれていて、数学と情報工学など複数の分野を学べる環境が未だ十分に整っていないからだ。学部や学科をまたいで相乗効果が見込める共同授業を提供するなど、有為な人材を育てるという目線に立たなければならないだろう。

私は少なくともこれらの問題点に限っては、筑波大学はおおよそクリアできていると思う。しかしそれでも、筑波大学にはもっと変わってもらいたいと期待している。いくつかの古い体質や慣習などを改めていくことが欠かせないからだ。

第1に、優秀な人材を発掘する方法を改めなければならないということだ。大学は本当にすぐれた才能を見つけ出すことができているのか、大いに疑問を感じているからだ。

当然のことながら、試験内容の変更などで試行錯誤はしているのだろうが、結局のところ教員が今まで実践してきた才能の選び方に固執し続けていることはないか、検証の必要があるだろう。それぞれの専門性に真に不可欠な能力は何かということを、世界や社会の変化に順応して常に問い直していかねばならないからだ。―次回に続く― (経営アドバイザー)

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