【コラム・川上美智子】県内で待機児童が一番多いつくば市は、昨年4月1日時点で131名と待機児童率の高さで全国24位であった。つくば市と並んで待機児童数が多い水戸市は、2018年度に民間保育所や小規模保育所の開設により定員を519人増加させ、待機児童数を18人までに減らした。つくば市は、同年に264名分増加させたが、待機児童の解消に至っていない。

その理由は、TX沿線への若い世代の流入と子育て世代の新規就労者の増加である。この地域では、保育所不足にとどまらず、放課後児童クラブの不足や小学校のキャパ不足も大きな問題となっている。人口増は地域の活性化にとり歓迎すべきことであるが、想定以上のことが起きており、その対応が求められている。

待機児童対策では、つくば市は今年度、研究学園駅~みどりの駅地域の民間保育所の設置を積極的に進めている。今年4月1日には、この地域に4つの民間保育園と2つの小規模保育園が開設される予定である。私が園長として勤務予定の「みらいのもり保育園」もこの中のひとつであり、放課後児童クラブを併設して地域のニーズに応える予定である。

これで待機児童は解消されるか?

これにより、つくば市の待機児童解消がほぼ達成されるのではないかと思われるが、それも瞬間的なことかも知れない。東京通勤圏という魅力ある地域にはさらに人が集まってくることも予想される。若い世代の動向をしっかり見極め、やがてその家族の年齢層や構成が変化することも想定して、TX沿線地域の姿を描く必要があろう。

また、保育園は、キャパの問題が取り沙汰されるが、問題はそればかりでない。それ以上に重要なのは質の問題である。今年4月の小学校の学習指導要領全面改訂に伴い、それに先駆けて国は一昨年度に保育所保育指針の改定を行った。

それは、国が幼児教育の重要性を認識したからに他ならず、その中で保育所を養護・保育の施設から幼児教育施設として位置づけた。ゼロ歳から3歳までの非認知能力の育ちや小学校に上がるまでの就学前の教育施設として幼少の継続性に力点を置くことになった。

この4月、つくば市内の保育施設は、公立保育所23、民間保育園41、認定こども園8、小規模保育所10に上る。施設による格差が出ないよう、それぞれの園が切磋琢磨(せっさたくま)して幼児教育の質向上に取り組まなければなるまい。(茨城キリスト教大学名誉教授)

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