【コラム・玉置晋】このコラムでも何度か述べていますが、地球周辺の宇宙環境の様子は「宇宙天気」と呼ばれています。この宇宙天気は美しいオーロラを出現させる一方で、人工衛星を使えなくしたり、地上で停電を発生させたりと、人類にとって厄介ごとを引き起す源でもあります。この災害を未然に防ぐ、減災することを「宇宙天気防災」と呼んでいます。 

「食う寝る宇宙」なんてコラムを書いていて、「宇宙の仕事をしたり、勉強をしたり、楽しそうですね」なんて言われることがあります。そんなときは満面の営業スマイルで、「ええ、宇宙は僕の生きがいで、毎日ワクワクしています」と答えていますが、これは本心ではありません。

どちらかというと、毎日つらい。好まざる仕事もありますし、円滑でない人間関係、理不尽極まる要求と、不満を挙げればキリがありません。

「宇宙天気防災なんて食えない、辞めてしまいたい」と思うこともザラです。目標が明確に設定されていれば、淡々とゴールを目指して進むことができますが、宇宙天気防災は発展途上なので教科書もないですし、教えてくれる先生もいない。何をやってよいかわからず本当に辛い。

2025年ごろ太陽活動極大期 

人は目標を与えてもらいたい生き物です。でも宇宙天気防災に関しては、目標を人に与えてもらうという甘い考え方は改めないといけないかもしれませんね。カリスマ的なリーダーがいらっしゃれば、その方についていけば生存率を高めることができるでしょうが、そんな救世主的なカリスマリーダーなんていません。

先日、ある若者に「まずは大きな目標を設定しましょうよ。まずは宇宙天気防災を布教しないと」と諭されました。まあ、暫定的に僕がリードしてみて、面白そうにやっていたら、僕以上に必要なカネ・モノ・ヒトを統率できる人材が食いついてくると踏んでいます。研究のこともよくわかっていて、社会のことも知っている「宇宙天気防災カリスマリーダー」を求ム! 

現在の太陽の様子をみると、第24太陽活動期が間もなく終了しそうな雰囲気です。第25太陽活動期の極大期は2025年ごろと予想されていますので、今のうちから準備しておきたいです。2020年代は、全地球測位システムや宇宙通信を一般ユーザが使いこなす、宇宙天気に脆弱(ぜいじゃく)な社会がはじめて経験する太陽活動極大期となります。(宇宙天気防災研究者)

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