《地域包括ケア》52 ラジオ体操で地域づくりを展開

朝のラジオ体操

【コラム・室生勝】厚労省のモデル事業をまとめた日本能率協会の「地域づくりによる介護予防・推進するための手引き」では、「週1回運動ができる身近な通いの場」「体操をきっかけに地域づくりへの展開」を奨めている。朝のラジオ体操から始まったTX研究学園駅前周辺の地域づくりを紹介しよう。

2009年夏、1人の男性前期高齢者が駅前公園へ携帯ラジオを持参して、朝6時半からのラジオ体操を始めた。彼が公園で体操を始めたのは、新しい土地で友人が欲しかったからである。05年にTXが開通して、研究学園2~7丁目、学園南1~3丁目、学園の森地区の人口は、新しく住み着いた人たちで増えた。

1か月も経たないうちに数人の男性高齢者が集まり、帰りの雑談のなかでシニアクラブづくりに発展した。2年間で会員が約30名に増えたのは、県内外から新しい街に移ってきた高齢者が友人を求めていたからだ。

数年の間に、ゴルフ、麻雀、絵画、手芸、グランドゴルフなどの同好会ができ、隔月の例会や歴史探索ウォーク、新年会、花見会、芋煮会、日帰り旅行などの催しや、お茶会や会食などの日常的交流が盛んになった。現在は会員も100名を超え、区会(自治会)運営や街の美化活動に関わる人たちから、新しい街づくりの取り組みが現れた。

マンションや一戸建てと居住区が違い、抱えている課題が多少異なっていても、街づくりの目的は同じである。市内で最も人口密度が高い市街地なのに、竹園、吾妻、並木のように市立保育所、市立幼稚園、交流センター(公民館)などの公共施設がないという不満があった。

区会活動も高齢者の介護予防に

昨年秋には、新たな小中学校の開校に伴う通学路の安全確保、高齢者が歩いて通える居場所の設置や区会(自治会)支部設立などを要望する任意市民団体が結成された。

その市民団体は、区会運営を多忙な壮年層の役員に負担をかけないように、実務を退職高齢者が担う方法を提案している。壮年層は役員の引き受け手が少なく、1年任期の区会が多い。これでは継続性が保てない。少なくとも2年任期にして役員の半数が交替する方法である。

シニアクラブの活動も区会活動も高齢者の介護予防になる。しかし、研究学園駅周辺では活動の場を確保するのが難しい。常設の場が欲しい。交流センターのような立派な設備がなくてもいい。50人がテーブル付きでゆったり座れる部屋、コピー機(有料も可)、洗面、トイレ、倉庫などがあればいい。

区会、見守り活動、地域の互助活動の事務局や高齢者サロンが午前から午後前半に利用し、午後後半は子ども会や児童館に、夜間は壮年層の趣味や学習の場に利用できる。休日には3世代交流の場に使える。

高齢者の介護予防は、まず地域に出て人と交流することである。職場第一の生活をしてきた退職高齢者の中には、地域に出るきっかけがない、あるいは知人がないため閉じこもりがちな人がいる。その人たちを交流の場に誘う方法として、空き地や公園を利用したラジオ体操をお奨めする。(高齢者サロン主宰)

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