《くずかごの唄》53 老人性うつ病にさせない試み 奥井サロン


【コラム・奧井登美子】亭主を老人性うつ病にさせないため、①本とのつきあい②好きな友達とのつきあい③好きな食べ物の提供―。とりあえず、この3つの試みだけを断固実行してみることにした。

彼の1月の楽しみは「奥井サロン」である。年に数回、山岳会の山男たちが我家に来て、しゃべったり飲んだり食べたりしてくれる。90才を過ぎた亭主は山岳会でも最高齢だが、もうほとんど山登りは出来ない。

それなのに皆と一緒に行きたいので、いつも小屋番で、時に手を引いてもらって、歩いたり、皆さんに迷惑をかけている。

そのお礼もかねて、サロンのときは、いつも、私の手料理を5品目作ることに決めてある。1月のメニューは、①肉じゃが②ローストビーフ③鶏のから揚げ④キウイとリンゴとレンコンのサラダ⑤キノコ飯―。

山男たちの新年会 ビールは少なめに

「サロンの人数は何人なの?」

「さあ、わからないなあ、13人くらいだろう」

13人の山男が来れば、大鍋一杯の肉ジャガでも足りないかも知れない。問題は飲み物である。ワインは好みがいろいろでうるさいし、焼酎は何で割るか多様なので、やめてもらった。そこで、ノンアルコール、ウーロン茶、日本酒、ビールのみ。

「日本酒は2升あれば足りると思うけれど、この前もビールがたりなかった。今度はビールを倍くらいにしてくれよ」

「ハイ、ハイ」

私は空返事で、ビールは増やさなかった。13人の男どもがビールをしこたま飲んだあとの、トイレのお掃除のことを考えると、増やす気になれなかったのである。亭主の楽しみを続けるには、私自身の健康が大事だと痛感した。(随筆家、薬剤師)

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