《邑から日本を見る》55 のんきな日本 これでいいのか

飯野農夫也氏の版画「憩い」

【コラム・先﨑千尋】年末から正月にかけて、この国に衝撃的なニュースが2つ飛び込んできた。前日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏がレバノンに逃亡したこと、アメリカがイラクでイランのスレイマニ司令官を殺害したこと。

C・ゴーンが国外に逃亡

しかし日本政府の反応を見ると、安倍首相はゴルフ三昧、菅官房長官の記者会見もなし。ゴーン被告の逃亡は国家主権を侵害されたことであり、中東の情勢は第3次世界大戦になるかもしれないという危機なのに。

日本時間8日夜のゴーン被告のレバノンでの記者会見は、予告されたほどの内容ではなかった。日本国内で「冷酷で強欲な独裁者」と言われたゴーン被告は、日本司法の非人道性、非民主的な「人質司法」を海外のメディアにアピールし、「裁判で争えば、時間が経過するばかりで、自由に行動できる保証はないため、逃亡する以外の選択肢はなかった」と逃走の正当性を訴えた。

ミステリーもどきの逃走劇は、彼が自宅から関西国際空港を脱出するまで、リアルタイムで報道されている。日本の警察や検察はそれを知っていて、法相や検察の弁明記者会見とは裏腹に、内心は邪魔者がいなくなったと喜んでいる、という報道もある。

私は、この問題は日産内部の問題であり、ゴーンの追い出しはやはりクーデターだったと考えている。捕まえて裁判にかければ、有罪でも無罪でもゴーンの影響力は日産という会社に及ばなくなる。

問題なのは、日本の司法への挑発、法治に背いたという批判よりも、ザルのような監視体制。カネがあればやすやすと海外に逃亡できることにある。日本の国家主権を侵されたのだ。その重大性を、首相、検察、裁判所だけでなく、多くのメディアまで認識していないことこそが問題なのだ。ゴルフをやっている、記者会見も開かない、関係者が一様に口をつぐんでいるという姿勢を批判しなければなるまい。

トランプが非理性的な決断

イラン、中東情勢が今後どう展開するか、今の時点では見通せない。

元々、米国とイランの緊張を高めたのは、国際的な核合意から一方的に離脱したトランプ大統領だ。原油の禁輸などの制裁を復活させ、軍事的な圧力も強めてきた。今回の殺害も、トランプ大統領が理性的な判断を下したのではなく、とっさに決めたという。米国内では、その手続きに異論が噴出している、と伝えられている。このことでわかるのは、トランプ政権はもはや国家としての体をなしていない、ということだ。

今回の事件はイラン国内ではなく、隣国のイラクで起きている。イラクの主権を侵している。無法者としか言いようがない。

しかし、安倍首相は殺害に言及せず、「中東情勢全般に深く憂慮する」と述べるだけ。菅官房長官も「日本は当事者ではなく、コメントは差し控える」と評価を避けた。それでいて、2月からの海上自衛隊の中東派遣は予定通り進めるという。

法律も国際的な協定も守らないトランプ大統領に何も言わないのに、韓国には厳しいことを平然と言い放つ。おかしいではないか。(元瓜連町長)

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