【コラム・室生勝】前回に続いて、「高齢者の居場所づくり」と「介護予防」を取り上げる。高齢者が歩いて通える居場所で、ボランティアや住民団体が体操を主とするメニューを1回2時間以上、月2回以上実施するサロンを支援する事業を、厚労省は2016年度から補助金を付けて市町村に奨めていた。「地域介護予防活動支援事業」である。しかし、つくば市は第7期高齢福祉計画(2018~20年)の78ページ(1)で説明はしているが、実施していない。

つくば市は現在、16年度から始めた「生活支援体制整備事業」の各地区(日常生活圏域)の協議会で行っている。参加した市民たちは、ワークショップで「居場所」「見守り」について討議し、共通認識を深めている。

25年には団塊の世代が後期高齢者となり、医療、介護、福祉サービスへの需要が高まる。ヘルパーはじめ介護医療職が不足する状況に備え、介護保険で提供できない生活支援サービスや高齢者の介護予防などに地域住民の参加が期待されている。

タイトル絵「生活支援・介護予防サービスの提供イメージ」の「自治会単位の圏域」に、「交流サロン」「コミュニティ・カフェ」「家事援助」「配食+見守り」などのサービスがある。その下にそれらサービスを提供する「事業主体」に「民間企業」~「ボランティア」が示されている。ボランティアには区会・自治会が中心で組織された住民のグループも含まれる。

「居場所」は高齢者だけが介護予防に利用するものではなく、多世代が多目的に活用する場である。区会・自治会の会議室・情報交換室、子どもたちの放課後の居場所、青壮年世代の趣味や学習の場、三世代交流の場などである。運営は、区会・自治会が中心になって、子ども会、通学路見守りボランティア、各青壮年グループなどの意見を聴いて行われる。

介護予防は60歳前後の退職者から

つくば市が体操を主とした介護予防サロンを広めるには、社協のふれあいサロンの協力が欲しい。月1回を2回に増やし、体操を実践していないサロンには保健師や非常勤の運動指導士、ボランティアのシルバーリハビリ体操士などから指導を受ける。

健康増進課の指導で、週1回開いている11カ所の高齢者の自主運動教室は介護予防サロンそのものである。いきいきプラザの運動教室も発展解体し、介護予防サロンを牽引する体操指導者を育成する場にすべきである。市は今までの一般介護予防事業の見直しが必要である。

市町村の介護予防施策は、60歳前後の退職者から始めるべきである。現役中は多忙を理由に健康診査を受けていなかった人たちに、退職後に迎える高齢期に備えて自己健康管理のノウハウを伝受する方法である。動脈硬化促進因子である高血圧、高コレステロール血症、喫煙、高血糖、肥満、高尿酸血症などの改善法である。

自己健康管理法は自分の持病の管理だけでなく、前期高齢者から後期高齢者へ、さらに超高齢者(2)に至っても、居場所の健康講座で継続的に学び、体操やウオーキングを続けておれば、健康寿命は伸びるだろう。老衰期になってやっと要介護となり、認知症が出現して天寿を全うできるのも決して夢ではない。(高齢者サロン主宰)

1 地域介護予防活動支援事業 高齢者が自分の家から通える場所で介護予防の体操等が行えるように、地域の担い手となる介護予防に関するボランティア等の人材養成、介護予防活動を行っていくための支援事業

2 日本老年医学会の高齢者に関する定義(2017年1月) 65~74 歳=准高齢者、75~89 歳=高齢者、90 歳~=超高齢者 

➡室生勝さんの過去のコラムはこちら