【コラム・玉置晋】2019年の秋口ごろからか、インターネット上で、ベテルギウスが極端に暗くなっているという話題が飛びかっています。ベテルギウスとは、冬の星座の代表格オリオン座の1等星で、狩人オリオンの右肩にある星です。小学校高学年で習う冬の大三角形(おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウス)の一角です。でかくて赤い「赤色超巨星(せきしょくちょうきょせい)」と呼ばれる恒星です。

ベテルギウスを太陽の位置に置くと、木星軌道に達するほどの大きさです。赤色超巨星の最後は「超新星爆発(ちょうしんせいばくはつ)」と呼ばれる大爆発を起こします。今回の減光はこの前兆ではないか?と騒がれています。

星までの距離は光が1年で進む距離「光年(こうねん)」で示されます。ベテルギウスという星は地球から約642光年離れたところにあります。約6千兆キロ! いま見ているベテルギウスの光は642年前(西暦1378年、室町時代)に発せられ、ようやく僕たちの目に届いたものです。

もしかしたら、ベテルギウスという星はもう存在していないかも知れません。また、超新星爆発の光が地球で観測されるのは、明日かも知れないし1000年後かも知れないです。

超新星爆発による大量のガンマ線放出

 超新星爆発の際には、大量のガンマ線が放出される「ガンマ線バースト」と呼ばれる現象が観測されます。もしも地球がこの直撃を受けたら、地球のオゾン層が破壊され、人類はエライことになるというのがSF小説の定番です。

4億5千万年前のオルドビス期末期の大量絶滅は、6千光年先から発射されたガンマ線バーストが10秒間地球を照射し、オゾン層を破壊したことが原因という説もあります。

同様のことが起こりうるのか、大学の指導教官と議論したところ、ガンマ線バーストのビーム指向は2度程度であるのに対して、ベテルギウスの自転軸は太陽系から20度ずれており、そう簡単に直撃はしないでしょう。

そして、何万年か先に爆発の衝撃波が太陽系にやってきます。しかし、太陽系に到達するころには弱まって、太陽風のバリアを超えてくることはないでしょう。ひとまずは安心です。(宇宙天気防災研究者)

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