【コラム・中尾隆友】私は全国の経営者を前にして講演をすることが多いが、そこでの反応にはある傾向を読み取ることができる。それは、裕福な地域の経営者ほど危機意識が薄く、廃れつつある地域の経営者ほど危機意識が強いということだ。

これを茨城県のケースで当てはめると、県南地域の経営者ほど危機意識が薄いといえそうだ。ご存知のように、県南地域は東京に近いだけでなく、とりわけTX(つくばエクスプレス)沿線は人口が増えているため、商圏(マーケット)で考えた場合、事業が傾くリスクは相当に軽減されるからだ。

人口減少とデジタル化で商圏は縮小

ところが、決して油断できないのは、経済のデジタル化が主流となる未来では、商圏という考え方が必ずしも盤石ではないということだ。アマゾンや楽天のような企業で商品・サービスを購入する消費者が増えれば増えるほど、着々と商圏は外部から浸食されていくのだ。

それに加えて、茨城県の人口減少は私たちが考えている以上に深刻な状況にある。国立社会保障・人口問題研究所の2045年の人口推計によれば、茨城県の人口は223万5686人にまで減少(2015年の291万6976人から23.4%減)し、日本全体の減少率(16.2%減)よりかなり大きいからだ。

主要な自治体では、日立市が36.6%減、石岡市が34.0%減、取手市が32.1%減、筑西市が31.8%減と、減少率が30%を超える自治体が少なくない。TX沿線を除いて、県全体で人口減少が加速度的に進み、商圏は縮小の一途をたどっていくだろう。

経営者に求められる資質とは

多くの経営者が取るべき道は、人口減少とともに縮小均衡をはかっていくか(廃業も含む)、人口減少によって売上げが減少した分、商圏の外から顧客を開拓していくか―2つに1つしかない。

経営者は10~20年後の社会を想像して、常に危機意識を持って事業に取り組まなければならない。時代の変化に早めに対応し、新しい戦略を構築するために知恵を絞らなければならない。

地域が活力を保ち続けるためには、企業が元気であり、雇用を提供する役割を果たすことが欠かせない。そういった意味で、ひとりひとりの経営者には頑張ってもらいたい。(経営アドバイザー)

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