9月6日11時53分(UT)に、活動領域2673(SO9W30)でX9.3フレア(12時2分=UT=に最大、12時10分=UT=に終了)が発生しました』

「なんてこった…」僕はこれから起こりうることへの恐怖と興味により、何とも表現しづらい感情と湧き出るアドレナリンを感じていました。

宇宙天気臨時情報のメールが自宅のパソコンに届いたのは、2017年9月6日21時40分(日本時間)。僕は即座にアメリカの静止気象衛星GOES(Geostationary Operational Environmental Satellite)のデータにアクセスし,太陽からのエックス線の強度トレンドをチェックしました。

「通常の1000倍の太陽フレアが発生した」

発生場所はどこだ?太陽面の中心付近か…。エックス線のトレンドから判断するに、コロナ質量放出現象も伴っているな。地球への直撃コースじゃないか。あと30分で放射線が来る。まずいな…。妻にちょっと出かけて来ると言い残し、人工衛星の運用室へと向かいました。

上記は、限りなくノンフィクションな「フィクション」です。実在の個人,団体とは関係ございません(お察しください)。

この現象はメディアでも大々的に報道されました。しかし、メディアがこの現象を知り、報道されはじめたのは、発生から約17時間後でした。幸い、この時の現象が私たちの生活に影響を及ぼすことは、ほとんどありませんでした。聞こえてくる情報としては、GPSの誤差が通常より大きくなった事、海外の人工衛星で軽微な障害が発生した事くらいです。

少し語弊がある言い方(専門家に怒られる)をしますが、太陽から放出されたガスの塊の「磁場の向き」が偶然、地球が耐放射線バリアを張るのに都合がよかったために救われたのです。怖いのは、影響がほとんどなかったのは「運がよかった」に過ぎない点です。

僕は、宇宙の天気を日々気にしています。「今日は晴れるかな?」「洗濯物は乾くかな?」と同列に「今日も人工衛星は無事かな?」と考えています。

2017年10月に新潟市で開催された第61回宇宙科学技術連合講演会にて、「衛星運用現場の宇宙天気アナリスト」なる職域を宣言して参りました。いわば宇宙の防人(さきもり)です。宇宙天気の新たな時代が始まりますので、「宇宙天気」というワードにご注目を。本コラムでは「宇宙天気」ネタが時々登場します。(玉置 晋)