【コラム・斉藤裕之】「あなたのお使いになっている携帯電話はそろそろ使えなくなりますので…」なんて、脅迫めいた手紙が送られてきました。要するに世は「5G(ファイブジイ)」時代ってこと。

ずいぶん前に壊れた携帯。それから友人の中古をもらって使っているのが今の携帯。ガラパゴスどころか、日本にいるトキより使っている人の数は少ないと思われる機種ですが、私にとっては至極(しごく)使いやすく、ストレスフリー携帯。もちろんネットなんか使わないし、いわゆる電話機というか受話器に近い存在。

いろんなアプリが便利だということはわかりますが、高機能の電子レンジで結局「チン」しか使わないのと同じ。なので、例えば3日休みがあって3日ぶりに覗(のぞ)いても、着信なしメールゼロ件。もっともメールも着信もないというのは、私にとってはとても幸せなのですが。ですから家に忘れて外出しても全く困りません。

ところで「かけ放題、〇〇ギガで〇〇円!安いでしょ!」って、いわゆる定額安心プラン。私には決して安くない。仕方なく大方は5Gの波に乗っていくことを余儀なくされるのでしょうが、ここは敢えて携帯を卒業するという選択肢もありかと。

てなことをカミさんに相談すると、「もしものことがあったらどうするの? 〇〇ペイとかの時代だし」。残念ながら〇〇ペイもなにも、口座にソモソモのお金がありませんし、もしもの時って…。山の中で熊と出会った時、携帯は役に立ちませんけど。

5G時代に「いちジイとして」ツッパる

そんなある日のことです。アトリエにやってくる小さな女の子。熱心に絵を描く彼女の首からぶら下がっているのはキッズ携帯。「これだ!」。ちなみに今を去ること10数年前、ある事情で私、キッズ携帯を首から下げていた経験があります。水色のかわいいヤツで、特に不便も感じませんでしたし、これは名案と思いカミさんに相談すると、「?」。はい、消えた!

ところ変わって故郷の山口。大工のかたわら古い漁船をもらい受けて漁に出ている弟から、携帯が瀬戸内海に沈んでいったという報告を先日受けました。海底で着信中の携帯なんてロマンチック?といいますか、そんな決定的なことがあれば、あきらめて携帯ショップに行くと思うのですが、いつも混んでいるのを見ると「まあいいか」って。

というわけで、前略、携帯各社様。電話とメールだけできる、名付けて「男は黙って黒電話シリーズ」格安プランでどうでしょう。追伸、今月また歯が1本抜けました。とりあえず来年の抱負としては、来る5G時代に「いちジイとして」でツッパっていく所存であります。(画家)

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