【コラム・先﨑千尋】今年最後の本欄はやはり東海村の話題だ。同村の山田修村長が雑誌の対談で東海第2原発の再稼働を容認すると受け取れる発言をしていたことが、地元で波紋を広げている。

村長の発言は原子力の業界誌『ENERGY for the FUTURE』(ナショナルピーアール社、東京)の10月5日号に掲載された。まず、発言の主な内容を示す。

▽社会インフラとしての安定的な電力の供給は絶対に欠かせない。BWR(沸騰水型原子炉)についても、しっかりと再稼働していく必要がある。

▽(福島第1原発の)事故があったから新規制基準ができた。論理的に考えれば、同じような事故は起こらないと思うはずだ。

▽東海第2の94万人が全員避難するという事態は、よほど事象が進展しない限り、起こりえない。(実際の事故時には)時間的に余裕があるから、冷静に動けば(避難は)できる。

▽原発は必要ないという人は、全ての外部電源を遮断して、自家発電だけで生活してもらわなくてはいけない。電車に乗ろうとしたら、それは電気を使うことになるので、自宅から一歩も出てはいけない。そんな生活をするのは無理だ。

東海村の山田村長発言が波紋

この山田村長の発言が明らかになると、村内の議員や反原発団体などが反応を示した。11月15日に阿部功志氏ら4人の議員が村長と面談し、真意を問い質した。次いで21日には「原発いらない茨城アクション実行委員会」のメンバー約40人が村役場で村長と懇談した。さらに25日の定例記者会見で釈明、28日には村議会全員協議会で村長とのやりとりがあった。

同村長はこれまで再稼働に中立と表明しており、整合性が問われたが、「対談ではBWR一般の話をしたので、東海第2のことではない」と逃げた。また、新基準で、従来よりも安全対策が強化された、と述べた。

一斉避難については、94万人が一斉に避難するという前提では、実効性のある避難計画は作れないと説明した。また、原発に否定的な人たちを「自宅から一歩も出てはいけない」と批判したことについては、「配慮が足りず、行き過ぎた発言だった」と陳謝した。

問題になっているこの対談の相手は新潟県刈羽村の品田宏夫村長。原発推進派として知られている。山田村長は、対談は相手のペースで進められ、自分の発言の意図とは異なる部分もあったが、修正すると対談にならなくなり、相手に失礼になるので、修正は求めなかった、だが問題になるとは感じていた、とも話している。

この山田発言について前村長の村上達也さんは「村民の意見がまとまっていない中で、村長として軽薄な行為だ。原発を認めない人を馬鹿にする発言も問題だ」と述べている。また前村議の相沢一正さんは「雑誌で言っていることが本音だと思う。ただ、再稼働についてはまだ判断していないというので、今後も話し合いを続けていく」と話す。

同村では来月に村議選が、2月には隣接の那珂市議選がある。東海第2原発の再稼働は同村だけでなく、周辺の5市の同意も必要なので、すんなり再稼働にはならないと考えられるが、選挙での大きな争点になることを期待したい。(元瓜連町長)

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