【コラム・坂本栄】前回つくば市の総合運動公園問題を取り上げたところ、その日のうちに閲覧数ベスト5のトップになり、その状態が1週間続きました。つくばの方の関心が強かったということでしょうか。未読の方は「影が薄くなった つくばの五十嵐市政」(12月2日掲載)の青字部をクリックしていただくとして、今回もこの問題を取り上げます。

先のコラムでは、総合運動公園用地跡処理について、市執行部案(民間業者に一括売却)と市議の多数意見(スポーツ施設などに活用)に隔たりがあると、まず指摘。市議の意見を踏まえると、執行部案は葬られ、2015年夏の住民投票でNOとなった前市長時代の計画(スポーツ3施設整備)を縮小した形(スポーツ1施設整備)に落ち着くのではないか、と予想しました。

総合運動公園問題 3の選択肢

仮にこのような展開になった場合、つくば市は時間を随分ムダにしたことになります。思い起こすと、計画中止を前市長に決断させた住民投票の用紙は、運動公園計画に賛成か反対かだけを問う2択式になっており、他の選択(どちらでもない⇒計画の修正)ができない形になっていました。3択式になっていれば、現市議の多数意見(当初計画の実質縮小)がすでに形を成し、陸上競技場などが完成していたかも知れません。

前市長が議会に諮った投票用紙案は3択式でした。ところが、議会はこの執行部案を否決して2択式を採用、賛成か反対のどちらかに〇を付ける形にしてしまったのです。今になって、3択式にしておけばよかったと、議会メンバーは不明(ふめい)を恥じているのではないでしょうか。

4年半前のつくば市は、運動公園建設をめぐり、300億を超す建設費に市の財政は耐えられない、予定地はTX駅から遠過ぎる―などの反対論と、国から補助があるから市の負担はずっと少ない、施設は東京五輪の練習用にも供用できる―などの賛成論がぶつかり、熱くなっていました。

巨額予算はダメとの声が優勢のなか、第3の選択肢(計画の縮小=経費も少なめ)が用意されていれば、多くの市民がこれに〇を付けていたのではないでしょうか。あと知恵ですが、現議会の意見を聞いていると、そんな気がしてなりません。

単純な選択肢は面倒を抱え込む

当時の議会はどうして2択式を選んだのでしょうか? 総合運動公園建設の是非というよりも、市の執行部案はもちろん、その修正案も葬りたいという、政治的な思惑が議員の間にあったからでしょう。行政問題の政治化が決定のプロセスを複雑にし、結果、時間の浪費につながりました。

選択肢がシンプルな2択式は分かりやすいという利点はあります。しかし、面倒を抱え込む選択をしてしまうという欠点もあります。熱狂のなか、英国のEU(欧州連合)脱出(ブレグジット)の是非を問うた国民投票のように、です。(経済ジャーナリスト)

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