【コラム・室生勝】来年4月から後期高齢者健康診査(健診)が様変わりする。40~74歳の特定健診と保健指導は市町村などに義務付けられている。だが、75歳以上の後期高齢者健診では、保健指導は市町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」に義務付けられていなかった。5月の国会で、高齢者の医療の確保に関する法律、国民健康保険法、介護保険法が一部改正され、各市町村で高齢者の保健事業と介護予防が一体的に実施できるようになった。

これらの法律によって定められていた「国民健康保険データーベースシステム」に入っている、75歳以上の被保険者一人ひとりの医療レセプト(診療報酬)や健診データー、介護レセプト(介護保険報酬)、介護認定(要支援1~要介護5)などの情報が介護予防に活用できるようになる。

また、後期高齢者健診の際に実施される15項目の質問結果も、介護予防に活かされる。栄養状態、咀嚼(そしゃく)および嚥下(えんげ)機能、運動機能、記憶力、生活習慣などの質問から、主にフレイル(虚弱、老衰、脆弱=ぜいじゃく=など)の有無が確認される。

その判定基準は、体重減少(6カ月で2キロ以上)、疲れやすさ、歩行速度の遅れ、握力の低下、身体活動量の減少―のうち3項目以上あればフレイルである。

その原因は、加齢に伴う活動量の低下、筋力の低下、身体機能の低下(歩行速度の低下)、活力の低下(疲れやすい)、認知機能の低下、慢性的な持病(慢性の気管支・肺疾患、心臓病、脳血管疾患、抑うつ症状、貧血など)―。

その結果、家に閉じこもり状態となり、世間から孤立する「社会的フレイル」になり、閉じこもりからうつ状態や認知機能の低下と「心理・精神的フレイル」になる。フレイルをどこかで断ち切らないと悪循環をつくりだす。

厚労省の考え方は甘い

厚労省の「市町村における高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施のイメージ」をみると、「フレイル予防等」で「通いの場等において、フレイル予備軍等を把握し、低栄養や筋力低下等の状態に応じた保健指導や生活機能向上に向けた支援等を行う」と、通いの場を強調しているが、市町村にできるのか疑問である。

厚労省は、介護保険のデイサービスやデイケアを利用することを想定している。介護保険事業者は将来のデイサービスやデイケア利用者確保のため、不採算を覚悟で参入するだろうか。一方、高齢者サロンで保健師、栄養士、リハ職などに活躍してもらう構想を描いている。これら専門職のボランティアあるいはパートタイマーを期待しているのだろうか。

市町村が高齢者サロンを介護予防事業として実施するのなら、専門職による健康自己管理法、個人メニューを入れた食事指導やストレッチング・体操などのプログラムで、週2~3回、3時間ほど実施を奨めてほしい。

私が4年間、高齢者サロンを週1回、2時間半開き、高齢者の病気、健康自己管理法、医療機関利用法、最期の迎え方などを学習してもらい、脳トレゲームや運動などを楽しむプログラムを続けることができるのは、よき協力者が数人いるからである。厚労省が考えているほど簡単に実施できるものではない。(高齢者サロン主宰)

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