《映画探偵団》26 友朋堂書店で買った『ゲーテとの対話』


【コラム・冠木新市】桜川流域のつくば中心市街地こと、旧つくばセンター地区には、一度閉店したあと再開した友朋堂書店がある。昨年、私は友朋堂で『ゲーテとの対話 下』(岩波文庫)を購入した。『ゲーテとの対話』は若手作家エッカーマンが、1823年に73歳のゲーテと出会い、82歳でゲーテが亡くなるまでの日々を記録した、上中下の3部作である。

42年前に上と中を購入し、夢中になって数々の貴重な教訓を読んだ。その後も時々読み返したが、なぜか下を購入することはなかった。自分自身の謎である。下にも刺激的なゲーテの言葉が多々出てくる。

「『みなさんは』と彼はつづけた、『本の読みかたを学ぶに、どんなに時間と労力がかかるかご存知ない。私は、そのために八十年を費やしたよ。そして、まだ今でも目的に到達しているとはいえないな』」とあった。

巻末には詳細なゲーテ年譜があり、1826年のところに「(略)世界文学の理念を構想。二月十一日、日記に初めて『ファウスト』執筆を「本業」と記す」と出ていた。

エッカーマンがゲーテと接していた時期は、大作『ヴィルへルム・マイスターの遍歴時代』と『ファウスト』の改稿の最中だった。とすると、『ゲーテとの対話』3部作は『遍歴時代』と『ファウスト』のメイキング本ともいえるのではないか。

対話の背景に、この2作品と世界文学構想が息づいていたと考えて読み直すと、教訓の数々がまた別な趣(おもむ)きをもって響いてくる。

『スター・ウォーズ』シリーズ

『ゲーテとの対話』を読み始めたのは、1977年、ちょうど『スター・ウォーズ』第1作が公開された年だった。巻頭のタイトルには、まだエピソード番号が入っていなかった。その後、1作目『エピソード4 新たなる希望』となり、『5 帝国の逆襲』(1980)、『6 ジェダイの帰還』(1983)―これは旧3部作。

そして、『1 ファントム・メナス』(1999)、『2 クローンの攻撃』(2002)、『3 シスの復讐』(2005)―これを新3部作。さらに、『7 フォースの覚醒』(2015)、『8 最後のジェダイ』(2017)、そして今月、『9 スカイウォーカーの夜明け』が公開され完結する。これは続3部作。

映画を見るのも読書と同じくらい時間と労力がかかる。完結編を見る前に、エピソード1から8の順序で見直してみた。

一番印象深かったのは、『帝国の逆襲』で若者のルークがジェダイ・マスターのヨーダと対話するシーンだった。ヨーダが「この世界はフォースに満ちておる」と教え諭(さと)す場面だが、40年前はルークに感情移入して見ていた。しかし今では、ヨーダ側に立って見ている自分に気がついた。またヨーダとゲーテが重なって見えた。これは『ゲーテとの対話』の影響だと思う。

『スター・ウォーズ』シリーズは、全編「遠い昔 はるか銀河系のかなたで…」の文句が出てスタートする。一見SF作品のようだが、実は昔話の時代劇なのだ。

今年3月、つくばセンタービルの設計者磯崎新が建築界のノーベル賞ともいわれるプリッカー賞を受賞し、私にとってはうれしいニュースだった。中心市街地はあと5年で40年を迎え、昔話の世界となる。「つくばセンター地区には、愛が満ちておるのじゃ」と、私もヨーダのような桜川流域の語り部になって、中心市街地の出来事を語るのだろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

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