【コラム・斉藤裕之】晩秋とはいえ、陽の下では半袖になって汗ばむ日もあったイルミネーションの設置作業。トランプさんも一緒に作業すれば、よもやパリ協定を離脱するなんて考えるはずがないのではと思いながら、気が付けばようやく霜の降りる朝に。駅前のイルミネーションのオブジェ制作を頼まれて数年。歳を追うごとに溜(た)まっていく疲労と筋肉痛と闘いながら、ふと思いついたこと。

パリの公園や広場にはぽつんとメリーゴーラウンドがあって、お金のない私たちにも百円そこらで子供に夢を見させてあげられる場所でした。アコーディオンの軽快な音楽。そして、キラキラとした光に包まれてグルグル回るだけのローテクな乗り物。子供たちが周回ごとに手を振り、それを見守るお母さん。どことなくもののあわれを感じさせるメリーゴーラウンド。

そうだ、駅前に飾り付けているイルミネーションを牛久シャトーのメイン会場にすれば人気のスポットになるはず。それからシャトーの中庭にはメリーゴーラウンドを常設すべし。西洋風の中庭にはとてもよく似合うし、話題になること間違いなし。

私の住む街にある牛久シャトー。突然の営業中止から、はや1年が経とうとしています。市は何とかして再開にこぎつけたいようですが、文化遺産としての価値を保ちつつ、新たに商業的な価値を生み出していくのは容易ではなさそうです。そこで採算の取れる現実的な大人な話がなされるわけですが、どうもピンとこない。

メリーゴーラウンド、人形劇場、子供馬車

絵空事とはよく言ったもので、絵描きさんは「そんな夢みたいなこと」を真面目に描いている人です。そんな私の頭の中には「シャトーにメリーゴーラウンド」に続いて、「シャトーにギニョール(人形劇場)」、ロバの引く子供馬車、養蜂場やおいしいアイスクリーム屋、もちろんワインにビール、カフェなど。アンティーク市なんかもいい。次々とイメージが思い浮かび、これはもはや「牛久シャトーパリ化計画」。

それから、既存のレストラン施設は地元の野菜や食材を使用した市民食堂に。つまり「市民給食センター」。隣に市役所もあるので、平日は職員のいわば社食ならぬ「市食」。これで平日の集客に気をもむ必要はありません。メニューは日替わりで。

ついでに、持込可のピクニック場や夏はキャンプなんかどうですかね。肝試しの名所としてワイン蔵あたりは最高。それからセルフ結婚式場ね。場所や施設を安価に提供し、手作りの式場として貸し出すプラン。言うは易(やす)しか?

さて、点灯式を待つのみとなったイルミネーション。「わー、きれい!」って歓声で苦労も報われますが、来年は本当にシャトーで作業をしているかも。その前に、来春にはシャトーでお花見がしたいものですね。もちろん正々堂々「桜を見る会」と銘打って。(画家)

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