【コラム・橋立多美】先月27日、レスリング女子63キロ級の2016年リオ五輪金メダリストで、57キロ級の東京五輪代表となった川井梨紗子さんが、出身地である石川県レスリング協会の下池新悟会長が「石川県には五輪内定者が2人いる。しかし残念ながら女だ」と発言したと告白した。

またか、である。スポーツ業界に限らず女性蔑視と男性中心主義的な言動に憤りを覚えつつ、「それは違うだろう」と忠告してくれる友人も家族もいないんだなとあわれみさえ感じる。

土浦の女性新市長、安藤さんに期待

さて、先の土浦市長選挙で16年間の実績を掲げて継続を訴えた中川清さんが、市議と県議を歴任し、変革の必要を前面に押し出した安藤真理子さんに敗れた。

女性市長の誕生は土浦市初で、現役首長としては県内唯一。男は女より秀でていて、政治家を筆頭に偉い人はみな男という認識が強い(ように思う)保守王国茨城の状況が覆された。

勝敗には、前中川市長が推し進めた公立幼稚園の廃止と公立保育所の民営化(10月31日掲載)が少なからず影響したと思う。

市選管の発表によれば、投票人数は男性約2万1000人で女性約2万2000人。女性が大挙して投票所に押し寄せたわけではないが、女性たちが安藤さんの公約「市立保育所の維持」に期待を寄せたと思える。

選挙のプロたちの予想は「中川さん当選」で安藤市長誕生を言い当てた人はいなかった。そこには「中川市政は長すぎだと思っても女性に任せようと思う有権者は少ない」との読みが働いたのではないか。

しかし、市政を女性候補に託してみようと思っていた人は男女問わずいた。そして、子どもを保育所に預けて働く女性たちの切実な思いをくみ取ることができれば、予想は違うものになっていたと思うのは私だけか。

つくば市は男女参画課を「室」に降格

女性の活躍を阻む壁は男尊女卑文化だ。1999年に「男女共同参画社会基本法」が公布・施行され、当時のつくば市の藤澤順一市長は男女共同参画課を設けた。ところが2004年に市原健一市長に代わると「課」から「室」に降格されて現在に至る。

表向きは、男性も女性も意欲に応じて、あらゆる分野で活躍できる男女共同参画社会を推進するとしながら、本音は「女性活躍なんて言う女は面倒くさい」という意識が透けて見える。こうした古い文化を温存したままでは地方創生は絵にかいた餅だ。

国会で女性議員に汚いヤジを飛ばすオジサンや、説明責任を果たさない国のリーダーの不誠実な言動を見るにつけ、安藤市長の活躍を期待する思いが強くなる。(ライター)

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