《土着通信部》34 これからが旬の味覚の寒烏

冬場に大群をつくるカラス=かすみがうら市新治、2017年撮影

【コラム・相澤冬樹】土浦から石岡や茨城空港方面へ車を走らすとき、かすみがうら市新治の間道をよく利用する。大きな養豚場があるせいか、寒い季節になるとカラスの群れが次第に大きくなって数百羽の大集団を形成している。

やはりここに群れを作っているトンビと、日がな追いかけっこを繰り広げているのがおもしろく、車を停める。制空権を握るべくカラスの群れが殺気立って鋭く切れ込むと、トンビの一群は円弧を描きながら空高くに舞い上がる。追い立てられている様子だが、あしらっているようにも見えて、あきずに見物してしまう。

寒烏(からす)に興味を覚えたのは、ここ数年のことだ。7-8年前、ひたちなか市で開かれた「ブラックバードの会」なる催しに招かれた知人が、寒烏料理を食べてきたという土産話を持ってきた。以来、冬場のカラスが気になって仕方がない。

料理学校の調理師が考案したカラス料理のフルコースが振る舞われたそうだ。うまかったというのだが、にわかには信じがたい。その知人も3年前に亡くなり、会が今も続いているかは確認できずにいる。

俳句をたしなんだ知人によれば、寒烏は新年の季語、味覚の旬も冬場らしい。なんでも、寒烏を食するのには訳があって、ひたちなか市の特産品である「干し芋」と結びついている。カラスの狩猟期間は秋から冬にかけてと決まっていて、この時期は収穫の終わったイモ畑に飛来し、我が物顔で畑に山積みされた葉や茎をたらふく食っている。雑食性を忘れ、草食になるため、肉から臭いが消え、刺し身(カルパッチョ)でもいけるのだそうだ。

烏と鴉と雅、いずれもカラス

漢字でカラスは多くの人が烏と書くが、俳句では「鴉」を用いるのが一般的と聞いた。けれど「鴉」一語では季語とはならず、「鴉の巣」(春)、「鴉の子」(夏)と組み合わせて使うという。

よくみると、この字、「牙」と「鳥」から成っている。してみると鳥の古形である「隹」(ふるとり)を「牙」と組み合わせた「雅」もまた、カラスのことではないか。漢和辞典に当たってみると、ビンゴだった。

烏と鴉と雅、いずれもカラスだが、その使い分けまでを書いた辞典はない。漢語で、神に仕える巫女が踊る朝廷の美しい様子を「夏(カ)」という。「夏」は「なつ」の意味だが、もともとは「美しい様子」、「美しい詩」を意味する。「雅」は「夏」と音が似ていたため、「雅」に「美しい様子」、「美しい詩」の意味が出来た(風船あられの漢字ブログ)そうだ。

都市ゴミをあさるなどして、今日ではすっかり嫌われもののカラスだが、古来わが国の形象文化のド真ん中に位置づけられる鳥類であった。烏の濡れ羽色という表現や八咫烏(やたがらす、サッカー日本代表のエンブレム)に象徴されるよう、美や畏怖(いふ)の対象とされてきた。食えない話である。(ライター)

➡相澤冬樹の過去のコラムはこちら