【コラム・沼尻正芳】先輩との「二人展」は、今年で5回目になります。先輩は今年90歳になりました。今年は先輩の卒寿記念二人展です。

私たちは、赴任した松戸の中学校で出会いました。その頃の先輩はベテランの学年主任で、生意気な新米教師だった私はずいぶんとお世話になりました。

数学担当の先輩は、退職してから子ども向けに数学の本を書きました。美術担当の私は、先輩の依頼で本の表紙と挿絵を描きました。

やがて、先輩は油絵を描くようになりました。西洋画家などの技法を研究し、緻密で質感のある静物や彩り豊かな風景を描き、個展で発表しました。退職後は、私も先輩のように油絵を描こうと思いました。「いつか2人で展覧会をしたいですね」。先輩の個展会場で私たちはたびたびそんな話をしました。

5年前に、念願の「二人展」が実現しました。展覧会は、つくば市の洞峰公園の展示ホールで行うことになりました。松戸時代の同僚や教え子たちが遠くから会場にやってきて、久しぶりの再会で話がはずみました。

洞峰公園の理想的な展覧会場

秋の洞峰公園は紅葉が色づき池には野鳥が遊び、展示会場はレストランも併設していて、ゆったりとした気持ちで絵を鑑賞することができます。公園を散策している人もたくさん訪れ、1週間で1000名を超える来場者がありました。予想をはるかに超えた来場者数で大変驚きました。公園に訪れる人たちは絵画に関心がある人が多いように感じました。それから毎年、この会場を借りて「二人展」を開催しています。

先輩は毎日、柏からやってきて会場で応対し、合間には公園でスケッチをします。展覧会が終わると、スケッチ旅行にすぐに出かけて作品の制作を始めます。その気力や行動力に頭が下がります。

近年、退職後に趣味で文化活動を始め、それを生きがいにしている高齢者が増えてきたように思います。サークルで活動している人たちもたくさんいます。

つくば市には、洞峰公園新都市記念館のほか、つくば美術館や市民ギャラリー、銀行や民間のギャラリーなど、それぞれに特色ある展覧会場があります。

私の住むつくばみらい市には、市民が展覧会をしたり鑑賞したりする専用の施設はまだありません。普段の生活の中でゆったりと地域の文化とふれあえる場所がほしいと思います。洞峰公園のような会場はゆっくりと作品を鑑賞でき、様々な人たちが訪れ、とても理想的な展覧会場だと思います。(画家)

◆第5回絵画二人展  11月21日(木)~27日(水) 筑波新都市記念館展示ホール(つくば市二の宮・洞峰公園内)

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