《宍塚の里山》48 秋の日を浴び 無数に飛ぶ赤とんぼ

アキアカネの産卵(おつながり)とアキアカネ=撮影:鶴田学

【コラム・及川ひろみ】夕焼けが美しい季節。夕空に無数に漂い飛ぶ、赤とんぼの季節を迎えました。赤とんぼ、秋になると赤さが際立ち、特にオスは美しい紅色に染まります。赤とんぼはナツアカネ、アキアカネなどアカネ族と呼ばれるものの総称で、中でもアキアカネはその数が圧倒的に多いトンボです。「夕焼け小焼けの赤とんぼ 負われてみたのはいつの日か」。この懐かしい童謡も、一説ではアキアカネを指していると言われています。

ナツアカネは夏の間、平地、宍塚でも普通に見られますが、田んぼや浅い水辺で一斉に羽化したアキアカネは夏には見られません。夏は、涼しい場所に避暑、高原などで過ごします。山に登ると、たくさんのトンボが見られますが、それがアキアカネです(そのときは赤くはありませんが)。

6月、浅い水辺や田んぼでヤゴからトンボになったばかりのアキアカネは、羽が弱々しく、きらきら翅(はね)を光らせて低空飛行。すぐ何かにつかまりおぼつかなげですが、数日後には仲間たちと旅立ちます。このころになると、結構な数が一斉に山に向かいます。

山頂で成熟したトンボは、秋になると下山、平地に戻ってきます。そのとき、遠くから見ると、雲と見まごうほどに群れ、一斉に戻ってきます。雲と言っても幅は広くはありませんが、その群れの真下にいると、無数のトンボが一方向に向かって飛ぶ、息をのむような光景です。

群れは里でバラバラに散り、里山一面に飛び交うようになります。秋の日を浴び、空中を無数に漂う赤とんぼ、ぜひ皆様に見ていただきたい光景です。

アキアカネの減少は稲の農薬のせい?

しかし最近、アキアカネの数が減り、問題になっています。それは、稲の育苗に使用されているネオニコチノイド系農薬の影響と言われています。この農薬はミツバチの大量死にも関係すると言われています。

ミツバチは、蜂蜜を採るだけでなく、果物や野菜の受粉になくてはならない生き物です。ミツバチの大量死は農業全体に大きな影響を及ぼしていると考えられています。そしてまた、人にかかわる大きな問題をも引き起こしているとも言われ、EU(欧州連合)ではネオニコチノイド系農薬の使用が禁止されています。

最近、農薬を使用しないで稲作を行っている農家で、大量にアキアカネが発生していると報告されています。世界農業遺産に選定されている、宮城県大崎市の農家でのことです。農業、稲作と生き物の共存を考え、よりよい環境を未来に伝えて行きたいものです。(宍塚の自然と歴史の会代表)

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