【相澤冬樹】高知県などに大雨をもたらし、日本海へ抜けた台風18号は3日、温帯低気圧に変わったというニュースをラジオで聞きながら、僕は筑波山から土浦に戻る車中にあった。国道125号の沿道には常陸秋そばの白い花が一面に咲き誇っている。1年前、このそば畑は台風禍(か)に遭っていたのだっけ。今年は大丈夫だろうか。僕は車を停め、宝篋(ほうきょう)山を背景に、満開のそば畑にカメラを向けた。

最後のコラムとなるはずだった昨年末の「土着通信部」第27回を、僕は年越しそばの話題で締めている。手打ちそば愛好家の集まりを取材すると、「そば粉が値上がりしてご近所に配るのも大変だ」と嘆いていた。たしか「相次ぐ台風に、収穫直前の常陸秋そばが直撃を受けて、収量が大幅ダウンした」という話を聞いたのだった。

改めて2018年の台風を調べてみると、日本本土への上陸数は5個(12、15、20、21、24号)、発生数と日本への接近・上陸数がいずれも平年を上回った。茨城への直撃はなかったが、9月4日徳島県に上陸した21号は記録的な暴風をもたらし、同30日和歌山県に上陸した24号は各地に停電をもたらした。

今年19年は、台風15号が記憶に新しい。9月9日未明に神奈川県三浦半島付近を通過し、その後は千葉県から茨城県を通り抜けた。千葉県南部に大規模停電の傷跡を残した。カメラに収めたそばの花はすくすく育っているように見えたが、被害はやり過ごせたのだろうか。

土浦市のそばは、もっぱら旧新治村の藤沢地区や大畑地区などで栽培されている。同市農林水産課によれば、生産者26軒で約48ヘクタールを栽培しているという統計(2019年)がある。概ね10アール(1反)あたり100キロ超の収量が見込まれるという。

旧新治村時代から「小町の館」(同市小野)でそば店を経営し、そば打ち体験などで販路を維持してきた同市農業公社と契約栽培している生産者が多い。同公社自体「そばオーナー」制度を設け、約2.5ヘクタールの圃(ほ)場で栽培している。市内外に参加者を募り、種まきから収穫、そば打ちまで体験するコースで、今季は8月17日に種まきをした。その自前の畑の生育状況しか分からないということだったが、同公社で話を聞けた。

「昨年は花の咲いた後、台風にやられたが、今年は花の咲く前に台風が来た。そばは倒伏したが花は無事に咲いて、満開の花の一部には青白い実が着き始めている。このまま順調に育てば昨年のようなことはない。ただ倒伏した枝葉はそのままなので、機械を入れての収穫作業は多少面倒になるかもしれない」

そばオーナー制度の「収穫の集い」は11月2日に予定。小町の館で新そばを販売開始するのは11月30日に開催の「収穫祭」以降ということだった。今年も年越しそばを考える季節になった。そばっ食いは気が早い。

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