【コラム・室生勝】毎週開くサロンに月2回以上参加する人たち34人のうち、30人が後期高齢者である。30人中、22人が診療所医師あるいは病院専門医の「かかりつけ医」を持っているが、在宅医療をしてくれるかかりつけ医は12人しかいない。

かかりつけ医を持っていない8人と、在宅医療をしないかかりつけ医を持っている10人が、在宅医療をしてくれるかかりつけ医探しを始めた。後期高齢者には急がなければならない課題である。

参加者らは、つくば市地域包括支援課が作成した「在宅医療介護マップ」を見たが、在支診(在宅療養支援診療所)と機能強化型在支診の項目に「往診をしない」「看取りの対応をしない」と記された医療機関がある、これは設置基準に違反しているとの指摘と、同課で点検、訂正してほしいと強い要望があった。市民を惑わすような情報提供であってはならない。

在宅医療をしない病院専門医をかかりつけ医としている人たちは、さらに在宅医療をする診療所医を見つけて、かかりつけ医をお願いするのかと質問があった。私はそうした方がよい、主治医を2人持とうと答えた。普段は診療所の「かかりつけ医」に受診して、病院専門医には年に2~3回、検査を主とした診察を受けるといい。

一般に、かかりつけの診療所医が患者に詳しい検査を必要とする場合、病気の経過および治療内容を記載した「診療情報提供書」を患者に渡して、病院に検査を依頼する。病院専門医は診察および検査した結果をかかりつけの診療所医に報告する。そして年に1~2回、病院専門医を受診し、検査を受け経過をみる。病状が悪化した場合、診療所医は病院専門医を介して病院に入院を依頼する。これが主治医2人制だ。

かかりつけ病院とかかりつけ診療所医の連携

高齢者は複数の慢性疾患を抱えているので、病院での検査は複数回診療科で受けることもあり、かかりつけ病院専門医は複数になる。しかし、カルテは一つにまとまっていて、各診療科の連携もよい。その病院をかかりつけ医と考えていい。複数の病院を受診している場合は、内科か脳外科にかかっている病院を主治医としたほうがよい。

私は開業医時代に、在宅医療を受けている高齢者や通院している後期高齢者で、持病が悪化して重症化する兆しがあれば早めに入院してもらい、7~10日間の治療で改善傾向に向かえば早めに退院させることを病院にお願いした。

重症になると長期入院となり、生活の質を低下させるだけでなく、生活環境の変化が認知症を発症あるいは悪化させるからだ。かかりつけ病院とかかりつけ診療所医の普段の連携が短期入院を可能にしてくれた。

現在、どの病院も開放型ベッドを持っている。開放型ベッドとは診療所医が依頼して入院した患者を診療所医と病院医が共同で診療するためのベッドである。かかりつけ診療所医が病院へ出向き、入院した高齢者のベッドサイドを訪れると、ほとんどの高齢者が安心する。中にはうれし泣きする高齢者もいる。入院という不安と慣れない環境による緊張が癒やされるからだ。

かかりつけ医は、病院の担当医が長年診てきた高齢者の病気の情報以外に性格や趣味、嗜好等の情報を提供できる。これらの情報は担当医にとって高齢者を和ませる道具となり、患者と担当医のコミュニケーションが深まり、必要な検査や治療が患者の協力で実施しやすくなり早期退院につながる。

かかりつけ診療所医と病院専門医の主治医2人制は、安心して在宅療養を続けることができる保証を高齢者に与え、かかりつけ医の在宅医療の負担を軽減できる。(高齢者サロン主宰)

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