【コラム・高橋恵一】近年の気象変動による自然災害は予想を超えている。以前の台風は、九州・四国地方を経由して日本海側に至ると勢力が弱って温帯低気圧になり、台風のまま北海道や青森に再上陸して大被害を及ぼすことなどほとんど無かった。また、立秋になれば、台風は列島に到達せず、手前で右旋回していたのだ。

今年の台風が日本列島を大回りし進行速度が遅いのは、日本列島に近接する太平洋の海水温が平年より「1℃」高いからだそうだ。気温の「1℃」というのは、日常生活の中では、それほど大げさに感じるものではないだろう。しかし、広がりと時間を掛け合わせると、環境を図る重要な指標になるのだ。

日本人にも馴染みの深い三国志の時代の中国では、急激な人口減少が起こった。日本の弥生時代の終わり、卑弥呼のころ、100年ほどの間に、5千万人以上だった人口が8百万人ほどになってしまったというのだ。繰り返される戦乱で国土が疲弊してしまったこともあろうが、寒冷化で、この間の平均気温が「1℃」下がったことが大きな要因だというのだ。

年間平均気温が1℃下がると、植物の生息適地の高度が170メートル低くなるのだそうだ。耕作適地面積が狭まることになる。にわかに納得しにくい気がするが、専門家の研究結果なのだそうだ。

温暖化で人類の生活適地は北上?

寒冷化による地球生物への影響は、北アメリカへの大隕石の衝突による火山の噴煙が太陽光線をさえぎり、寒冷化して恐竜が絶滅したというのが有名だ。近未来的には、核戦争が起これば、核の雲で同様に太陽光が届かず、今度は人類が死滅することになるのだそうだ。

今は、地球温暖化である。温暖化により、人類の生活適地は北上することになるのだろうか? 地球上でゆとりのありそうな地域は、ロシアのシベリアくらいだろう。しかし、シベリア鉄道の北側は、土質が悪く、耕作には向かない地域なのだ。

世界の政治、政府の温暖化対策もリップサービスでなく、財源措置を伴う本気の取り組みが必要なのだ。

イタリアの女性科学者の研究では、都市部において、街の街路や住宅に樹木が植えられていると、その街の平均気温は「1℃」下がるそうだ。市民レベルでも、さまざまな取り組みを考え、化石燃料の削減につながるような生活態度に変えていかなくてはならないのだ。(元茨城県生活環境部長)

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