【コラム・斉藤裕之】尿管結石(にょうかんけっせき)粉砕から1カ月の後、意気揚々と訪れた病院。レントゲンで石が無くなったことを確認したその時、「それではステントを抜きますので、呼ばれるまで廊下でお待ちください」と看護師さん。「はあ」と返事はしてみたものの、いまひとつ飲み込めない私。といいますか、この1カ月、ステントなるものが尿管内にあったってこと?

どうりで、目くるめく残尿感と尿意の繰り返しと、なんとなく感じる異物感。というわけで処置室に入ると、「下着を脱いでこの椅子に座ってください」。すると、椅子は自動で回転して私の足を持ち上げます。なすがままのあられもない姿の私。そして奥から先生登場。

「ハイではちょっと我慢してください」。ギュイーン、グイ、スカッ、フ~、一件落着。というか、そういうのが入っているとか抜くとか、ひとこと言っといてよ~。しかし、いやー、気持ちよくおしっこが出るって、なんて幸せなんでしょう。

話は少々遡(さかのぼ)って、入院中に血圧を測る看護師さん。「斉藤さん、マラソンかなんかやってました?」「水泳は…。かなり昔ですけど」「脈拍が45なんですけど。でもって血圧は高め」「はあ」。

血圧が高めなのは気づいていましたけど、脈がそこまで遅いのはなぜ? 頭の中でポンプとホースを思い浮かべてパスカルの法則…? しかし高血圧は万病の元。先日も「サイレントキラー」なる呼び名を見かけたばかり。

目覚ましい技術革新に感謝

以来、ホームセンターの血圧計売り場をうろつくこと数回。かみさん曰く「計ってもしょうがないでしょ。下げることをすればいいんじゃないの」。その通りです。しかし、ダイエット通の友人曰く「痩せるのと一緒で、目に見える記録をとるのが有効」なのだとか。というわけで、血圧計を購入。

そういえば、時代物の小説なんかに「癪(しゃく)」とか「癪持ち」なんて出てきます。尿管結石なんかも含めて、わけの分からない突発性の痛いヤツは全部「癪」だな。原因も治療方法も分からなければ、そりゃ人生50年だわ。私も50までは、ほんと医者なんか行ったことなかったんだけどなあ。

これからは100年いけるらしいけど? あ、血圧ですがなんと極めて平常値。結構高めだったのになあ。お酒止めたし。

それにしても、こと医療については目覚ましい技術革新に感謝しかないのですが、最新技術は兵器開発の副産物という側面もあるとか。「尿管結石破壊作戦」という言い方もできるわけで、人を生かすも殺すも人間の知恵。新しい技術はできるだけ善として使われてほしいと思ったりもしました。

まあそのうち、家庭用血圧計のように「オッケー〇〇、今日の血液データは?」なんて日もそう遠くないでしょう。さて石も取れたし、血圧も異常なし。台風で飛んだ煙突も直したし。これで、個展に向けて思う存分ドタバタな日々を送れます。(画家)

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