【コラム・斉藤裕之】日ごろの行いが悪いのか、日帰りの施術(せじゅつ)では尿管の石は破壊されず再度入院。今度は尿管からステントを入れてと相成りました。施術自体は1時間ほどだそうですが、入院は3日間。ということで、暇つぶしとしてあるものをお供に入院することにしました。

それは親父の日記。この春、山口の実家を片付けた折に持ち帰ったもの。ちょうど親父が結婚した年と、私が生まれた年の2冊。

記されているのは、天候、起床・就寝時間、食べたもの、仕事のこと、裕之君として登場する生まれたばかりの私の様子など。その当時、親父は地方新聞の記者?をしていたと思うのですが、広告取りに行っていたのか、毎日何軒かの飲食店を巡り、昼間からビールを何本飲んだとか、何件ハシゴしたとかの毎日。2日に1度は2日酔いという記述。

ということは、毎日、酔っているということ? またその現場いうか、飲食店、居酒屋、スナック、時計屋、すし屋などは、私が小学校から新聞を配っていたお馴染(なじ)みの店ばかり。記憶として嗅覚は長く残るそうですが、当時の店構えはもちろん、お燗(かん)の匂いやおでんの香りを鮮明に覚えていて、そこで一杯やっている親父の姿は容易に想像できます。

それから、今とは違って大分ゆるい日常の描写。雨が降っているから出社しないとか、3日にあけず釣りに行ったり、若き日の叔父や叔母が頻繁(ひんぱん)に遊びに来ていたりとか。勤務中には将棋、夜は隣のおばちゃんと花札三昧―。

また、この日記から私が初めて髪を切った日が判明。隣の爺(じい)さんが鷹(たか)を飼っていたという記憶が正しかったこと、扁桃腺(へんとうせん)が腫(は)れやすいのは親父からの遺伝であることも確認できました。

それから、風呂を焚(た)くこと、入浴のことが記されていて、1日のとても重要な行事だったことがわかりました。

この日記もいつか娘たちが読む?

さて無事に施術も終わり、退院するとともに強烈な暑さの毎日がやってきたわけですが、夏休みの間は子どものお絵かき教室もお休み。「工作やお絵かきの宿題は自分でやりなさい」ということ。最近、お絵描き教室や、へたをすると公の講座が夏休みの宿題をお手伝いするというおバカぶり。

極(きわ)めつけは、先日本屋さんで見かけた「読書感想文の書き方」という本。いっそ、この本の感想を書いてみるのもいいのかなと。というか、そもそも夏休みに、宿題は――特に自由研究とか工作とか――いらないでしょう。なんで小学生が貯金箱作るの?

というわけで、今回は夏休みの読書感想文「親父の日記を読んで」というオチになりそうですが、この「平熱日記」もいつか娘たちが読む日がくるのでしょうか? そのためではありませんが、来年は夏休みの宿題として、自分で製本でもしてみようかと思います。(画家)

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