《くずかごの唄》44 痛い 痒い 虫さされの人体実験

チャドクガ

【コラム・奥井登美子】「きのう庭の草刈りをしました。腕が赤いブツブツで、痒(かゆ)くて痒くて眠れませんでした」「先生はチャドク蛾(が)に刺されたのでは…」

「チャドク峨って何ですか?」「庭にツバキかサザンカの木がありますか? 葉の裏に北朝鮮の兵隊みたいに、キチンと整列した毛虫がいませんでしたか?」

私は、我が家の庭で撮った毛虫の写真を見せる。小さなツバキの葉の裏に、北朝鮮の兵隊のように毛虫が整然と隊列を作って、30匹くらいが並んでいる。

「小さい毛虫で、毛も見えないくらい細いのですが、皮膚に刺さったら抜けない。ものすごく痒いです」「こんな痒いのは初めてです」

毛が皮膚に刺さったときの顕微鏡写真を見たことがあるが、先が二股(ふたまた)に開いて抜けなくなる。私は急いで処方箋に書いてある内服薬の抗アレルギー剤と、ステロイドの軟膏(なんこう)を調剤してお渡しした。ベテランの医者はこういうとき、副作用として少し眠くなる抗アレルギー剤を、寝る前に服用するように処方する。

自分の腕に乗せて動きを観察

我が家の庭は、野鳥も虫もムシできないから、いろいろな虫がいる。刺されたときにどの虫がどの程度痛いのか、痒いのか、知っておく必要があると思った私は、蜂以外のいろいろな毛虫と芋虫を、自分の腕に乗せて彼らの動きを観察してみた。

意外だったのはダニ類。小さくて目に見えないほどのダニが、血を吸うとドンドン大きくなっていく。そのときは痛くも痒くもないのに、2~3日経ってから痒くなってくる。ダニは大小さまざまで、30種くらいは散歩の道端にいるというから、案外、ドクターもわからない痒さの曲者(くせもの)かも知れない。

イラガの毛虫は葉の裏にいて、葉と同じ色をしている。刺されると飛び上がるほど痛い。ムカデは痛くないが、皮膚が赤く腫(は)れて痒い。

植木屋さんに聞いた茶毒峨(ちゃどくが)の治療は、毛の刺さったところにお塩を揉(も)んで15分したら水で洗い流すだけだった。とても合理的な治療法だと思う。(随筆家)

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