【コラム・玉置晋】7月25日、直径約130メートルの小天体「2019OK」が地球から約7万2000キロのところを通過。月軌道の内側5分の1ほどの距離でした。このような地球近傍天体はNEO(Near-Earth object)と呼ばれています。

発見されたのは、最接近1日前の7月24日でした。宇宙防災の立場からは、「もしも」という観点で見ないといけないのですが、100メートル級の小天体が地球に衝突した場合、東京都と同規模の範囲を壊滅させるとの報道もあります。

しかし実際のところは「よくわからない」ので、日本では、社会としてどう立ち向かうのかという議論は醸成されていません。この件について報道されたのは7月29日でしたから、「とっくに通過してるやん!」

きっと偉い学者さんやお役人さんが、きちんと考えてくれていて、助けてくれるはずだと考えておられる方がいましたら、残念ながら、われわれ人類の実力は「ある日都市が壊滅していました!」のレベルであることを認識しておくべきです。

「宇宙災害3兄弟」 

100~1000年に1回の頻度だけれども、社会に壊滅的な被害をもたらす災害は「低頻度大規模災害」と呼ばれています。僕が研究している宇宙天気も同様なので、NEOのニュースはとても親近感(?)をもってウォッチしました。宇宙天気、NEO、スペースデブリ(宇宙ゴミ)のことを、僕は「宇宙災害3兄弟」と呼んでいます。

歴史的に最も浅い、末っ子のスペースデブリが、ビジネス化の点では一歩先んじています。宇宙天気も、負けじとアプローチをしたいところで、8月5日、つくば市で開催された「いばらき宇宙ビジネスサミット2019」に参加しました。

僕が属している茨城大学野澤研究室(宇宙天気防災学)も、企業などと交流する発表とポスター展示を行いました。ブースに足を止めてくださる方がたくさんいらっしゃいました。宇宙ビジネスセクターでも、宇宙天気への関心は高いという感じです。課題は持続可能な事業とするにはどうしたらよいのか?

NEOが地球をかすめていたころ、「ししむん(家族や親しい友人は僕をそう呼ぶ)、来週の日曜は暇ですか? 日帰りで野辺山に行こう」と、LINEで連絡をいただきました。その友達は、家族皆が宇宙好きの「スペースファミリー」です。というわけで、次回のコラムは「食う寝る宇宙 野辺山編」です。(宇宙天気防災研究者)

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