【コラム・及川ひろみ】光が当たると金色に光り輝く青紫の羽を持つチョウトンボ。先端は透明で、飛ぶ姿は優雅に舞うチョウのように見えますが、実はトンボ。日本のトンボの中では、最も美しいと言われるトンボです。

この時期、宍塚大池の水面には、このトンボがたくさん漂うように飛ぶ姿が見られます。ネットで簡単に採れそうですが、おっとどっこい、とらえようとすると空を切って素早く逃げ去り、やすやすとは捕まりません。

このトンボの特徴は下翅(かし)の幅がとても広いことと、腹がとても細く短いことです。トンボは飛んでいるときに長い腹が目立ちますが、チョウトンボは後ろの翅(はね)の下にちょっと見えるだけで、飛ぶ姿がチョウのように見えるのです。実は目玉からしっぽの先まで黒づくめで、腹が目立たないのはこの黒色も関係しています。

このトンボ、トンボになりたての若いころは、池近くの林の上空を20~30群れて飛びます。翅(はね)をほとんど動かすことなく、空中に漂っているように飛びます。上空を飛ぶ小さな昆虫を捕らえようと待っているのでしょう。

チョウトンボが多い宍塚大池では、この光景が池の近く、あちらこちらに見られます。今年は大きな群れを何度も見ました。

優雅な姿は大池の夏の風物詩

夏真っ盛りになると、大池では古代ハスを思わせるピンクのハスの花が見事に咲きますが、ハスの花に止まるチョウトンボは夏の風物詩。多くのカメラマンが、美しいハスの花とチョウトンボのツーショットを撮ろうとやって来ます。今年もその季節になりました。

これから、チョウトンボは水面にお腹をちょんちょんと付け、卵を水中に落とします。でも孵化(ふか)したチョウトンボのヤゴは、なかなか見つけることができません。池底の泥に身を隠し、水中のプランクトンなどを食べて成長すると言われています。

こうしてみると、トンボは幼虫時代のヤゴも成虫のトンボも肉食性で、特に成虫は害虫ハンターとしての役割を果たしています。

宍塚大池にチョウトンボがたくさん飛ぶのは、ミクリ(絶滅危惧種)、ウキヤガラ、ヨシ、マコモなどの抽水(ちゅうすい)植物と言われる水草が池を囲むようにあり、さらに水面にヒシなどの浮葉(ふよう)植物などもあるから、と言われています。

この美しい優雅なトンボ、まさに宍塚大池の夏の風物詩です。(宍塚の自然と歴史の会代表)

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