《地域包括ケア》39 終末期の医療・ケアに自分の意思を

高齢者サロン

【コラム・室生勝】私が開いている高齢者サロンには後期高齢者が多く参加するので、介護予防だけでなく終末期の話もする。今月は「終末期の医療・ケアについての意思表明書(リビング・ウィル)」について架空例を参考に勉強した。

それは、80歳半ば男性、身長170センチ、体重75キロ。今治療中の病気は高血圧で、毎朝起床時の血圧は140~80以下に落ち着いている。数年前に狭心症があったきり発作はない。趣味はゴルフ。毎朝約3キロのウォーキングを行っている。アルコール、タバコは60歳前に止めた。

架空例のリビングウイルをみんなで考えてみた。高血圧があり、数年前に狭心症があったから、将来、心筋梗塞や脳梗塞を発症する可能性がある。発症したら入院して最善の治療を受けたい。しかし、重度の意識障害が進行、覚醒しないと診断されたら、延命治療をしないでほしい。

脳梗塞による片まひ、摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害、構音(こうおん)障害、失語症などが合併したら、積極的にリハビリをして効果が不十分でも、3カ月で退院したい。退院後はデイケアや自宅でリハビリを続ける。誤嚥(ごえん)性肺炎が併発したら治療を受ける。そしゃく障害や嚥下障害のため摂食困難になったら、口腔リハビリをしながら流動食・半流動食と進めてほしい。経管栄養や胃瘻(いろう)は受けたくない。

食道、胃、小腸、大腸などのがんで、食物の通過障害が出たら手術を受けるが、それ以外のがんが発見された場合は手術を受けたくないし、制がん剤治療をしても副作用が強い場合は中止し、自然の経過にしたい。苦しい検査、例えば大腸内視鏡検査を受けたくない。痛みや苦しみを取ってほしい。

認知症になっても薬を服用したくない。趣味の話、懐かしい話、絵画、写真、音楽などを用いた介護を受けたい。病状が進行して食事も果物も菓子も食べられなくなったら、口唇を湿らすだけでよい。そのままで最期を迎えたい。

アドバンス・ケア・プランニング

医師の私が加わったから、架空例のリビングウィルをみんなで書くことができたが、医療者でないと書けないと、参加者から指摘された。自分が歳をとって、最期はどのような状態になるのか、かかりつけ医や検査してくれた病院医に聞かないと分からないと、参加者は異口同音に言った。

最近、高齢者が入院すると、「もしものとき」を想定して、最期にどのような治療や看護を受けたいか、どのような治療は受けたくないかを、患者本人が家族、医師、看護師らとも話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)が実施されているらしい。

厚労省はACPを国民によく知ってもらおうと、昨年11月30日(いい看取り・看取られ)に愛称を「人生会議」と発表した。聖隷浜松病院の看護師・須藤麻友さんが応募したネーミングである。彼女は、重篤(じゅうとく)な状態に陥り、意思表示できないままに最期を迎える患者をケアすることが多い中で考えついたと言う。

意思表示できるうちから、かかりつけ医、家族と話し合っておけば、自分の意思を伝えることができない状態になっても、自分の望む最期を迎えることができる。来月のサロンでは桑名市の冊子を教材に「人生会議」を勉強することになった。(高齢者サロン主宰)

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