【コラム・先﨑千尋】時の政権に中間評価を下す参議院議員選挙が始まった。「安倍政治の評価が争点」(茨城新聞7月4日付社説)、「安倍1強に歯止めか、継続か」(朝日新聞同)、「三権分立の不全を問う」(東京新聞同)。各紙の社説のように、今回は安倍政治への評価が争点になるようだ。

具体的な政策としては、憲法、沖縄辺野古への新基地建設、消費税の増税、老後の生活に2000万円足りないとする年金問題などで与野党間に大きな違いがみられる。党首討論などでは、与党の「政治の安定」か、野党の「生活防衛」かで、際立った違いを感じた。

1票を投ずる私たちは、そのどれを重要な課題、自分の問題とするかによって誰に入れるかを決める。茨城県では、再選を目指す自民党の現職と新人4人が2つの議席を争っている。

茨城県に住んでいる私は、やはり日本原電東海第2発電所の再稼働問題が最大の争点だと考えている。日本原電は、運転して40年経過したこの発電所をさらに20年延長して稼働させたいとして、昨年秋に原子力規制委員会に許可申請を出して認められた。

しかし、再稼働のためには周辺6市村の同意などクリアすべきハードルがある。東海第2原発が再稼働して事故を起こせば、本県だけでなく首都圏に大きな影響があると予測されている。マスコミ各社の世論調査でも、県民の6~7割が再稼働に反対の意向だと伝えられている。

私は、「どんな立派な政策(公約)を掲げても、茨城県をこうしたいと訴えても、東海第2原発が事故を起こせばそれらはすべて無になってしまう。福島の事故でわかるように、今住んでいるところにいられなくなり、生活そのものが根底から壊される」と考えている。

気がかりな日米貿易交渉のゆくえ

私は長いこと農業、農村に関わってきたので、「安倍農政」の是非も問いたい。

安倍首相は生産農業所得や農産物輸出額の増加を成果としているが、農業就業人口の減少、荒廃農地の増加など生産基盤の弱体化は止められず、政府が掲げた目標の進捗(しんちょく)状況は芳しくない。農業だけでなく林業、漁業の1次産業全体がそうなのだが、それらに従事していたのではメシが食えない(生活ができない)現状では、農山漁村の衰退は止められない。

さらに気がかりなのは、日米貿易交渉のゆくえだ。わが国はTPPの水準でと言っているが、トランプ大統領は5月の日米首脳会談のあと、「農産品と牛肉で大きな進展。成果は7月の参院選後まで待つ」と、思わせぶりな発言を繰り返している。参院選前に明かせないのは、この貿易交渉でわが国は失うだけで、得ることは何もないからではないか。安倍首相との間で密約ができていると勘繰りたくなる。

とにかく、選挙の時、主権者は私たちだ。私の1票がこの国を変える。各党、それぞれの候補者の主張、公約を見定めて、投票所に行こう。(元瓜連町長)

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