【コラム・浅井和幸】ある男性来談者の「人生がつまらないのはどうしてですか?」との質問に、私は言葉が詰まり、ちょっと考え込んでしまいました。「どうすれば人生が面白くなりますか?」ではなく、「人生が面白くない」理由を問われたからです。

これは、「野菜がおいしくないのはどうしてですか?」という質問に似ています。それは、おいしい野菜を食べたことがない、まずい野菜を食べているからです。素材が悪いのか、調理が悪いのか、はたまたタイミングが悪いのか。体調が悪いときに食べたら、おいしくないかもしれませんね。

つまり、人生が面白くないのは、面白く感じないことばかりを体験しているからです。ほとんどの場合は、面白いことを体験しても面白くないと意識しやすくなっていて、思い出すことも面白くないことが多くなります。心身の調子が悪いときほど、「人生は…」と考えてしまうからです。

「面白いことを感じるためには、面白くないことを意識して避けることが大切だ」ということに固執してしまいがちです。楽しく、調子がよいときに、「人生は…」と考えずに、人生を面白くないように感じるよう努力していることになります。

前出の野菜に「人生」を当てはめれば、人生を面白くするには、面白い瞬間を感じること、意識することとなります。「面白い」を感じるには、少々練習が必要です。それは、より面白いと感じやすいかなという体験をしてみる、意識してみることになります。

楽しいときに人生の意味を考えよう

面白いことを感じるのに、練習が必要なはずがないと思われがちですが、まずは、形から笑顔や笑い声を出してみるという方法もあるぐらいです。

いきなり一発逆転の、全てがひっくり返るぐらいの面白いことを体験しようと考えることは、余裕がなければなおさら避けたほうがよいでしょう。むしろ、些細(ささい)な「面白い」「楽しい」「美味しい」「美しい」「心地よい」を、少しずつ感じるようにしてみてください。

些細なことをバカにせず、それらを感じられるようになってきたら、大きな喜びも感じやすくなっていくということを、頭の片隅に入れておきましょう。

そういえば、この質問と同じ様な言葉で、「人生の意味を考えるのですが、苦しいことばかりです」という言葉を聞きます。苦しいときに、人生の意味を考えてしまうからですね。できたら、楽しいときに人生の意味を考えるようにしましょう。(精神保健福祉士)

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