【コラム・及川ひろみ】梅雨の晴れ間、ほんの短い期間、コナラやハンノキなどの樹上で、羽を光らせる美しいシジミチョウの仲間、ゼフィルスと呼ばれる宝石のようなチョウが宍塚の森で見られます。このグループのチョウはあまり花にはやってこないので、目にすることはほとんどありませんが。

ゼフィルスは、樹上性のシジミチョウの仲間を総括して Zephyrus と呼んでいたのが始まりで、語源はギリシャ神話の西風の精、春の訪れを告げる豊穣な風をもたらすという「ゼピュロス」にちなんでいます。日本には25種、宍塚でも6種が確認されています。

今ごろの夕方、コナラの樹上に小さなオレンジ色のチョウがひらひらと飛び始めます。少し休んではまた飛ぶ、消えてはまたチラチラを繰り返します。これはアカシジミです。ハンノキでは、朝の光を浴びて、緑に光り輝くチョウ、ミドリシジミが見られます。

やって来たほかのミドリジジミを目ざとく見つけ、威嚇(いかく)の舞。間もなく縄張りに戻り、じっとよそ者の飛来を待ちます。どのゼフィルスも、それぞれ異なった行動を見せ、チョウが生き抜くドラマの一瞬を垣間見ることができます。

ワクワクの森=ゼフィルスの森

宍塚の里山には「ワクワクの森」と名づけた会所有の森があります。広さ1万2700平方メートル。春には山桜、ヤマツツジの花が美しい雑木林で、宍塚大池の水源林でもあります。この森の名前を決めるとき、会員に名称の募集をしました。

タスキの森、命の森、次世代の森、交流の森、成長の森、創造の森、飛躍の森、誇りの森、和の森、叡智の森、絆の森、学びの森、憩いの森、ふれあいの森、希望の森、わくわくの森、友子さんの森、ゼフィルスの森、わくわく山、もりもり山、もりもりやま、うたゝねの林、平成の森、いかっぺの森、さわやかヤマ、さわやか森、平安の森、木漏れ日の森。計28の名が寄せられました。

どれもなるほどと思う名称でした。「わくわく」は心が沸き立つ未来志向な名であると、僅差ではありましたが、「ワクワクの森」の名が選ばれました。「ゼフィルスの森」も、森に「ゼフィルスをはじめ様々な生き物が生息するように」との願いが捨てがたいと、正式名は「ワクワクの森(ゼフィルスの森)」に決まりました。

かつて里山の森は、伐採、萌芽更新を繰り返し、伐採木や枯れ葉は大切な資源であったことを地元の方から聞き(「聞き書き里山の暮らし―土浦市宍塚の里山を事例に」記載)、2014年から、宍塚の会は、伐採木は薪に、落ち葉はたい肥に活用し、森の一部には生き物がより生息できる場所「エコスタック」もつくりました。

現在では、林床に光が当たる明るい森になりつつあり、ゼフィルスもやって来るようになりました。(宍塚の自然と歴史の会代表)

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