【コラム・室生勝】今回のコラムの写真「南生協よってって横町」は名古屋市の南医療生活協同組合の複合型サ―ビス付き高齢者住宅(サ高住)である。伊勢湾台風(1959年)のとき救援活動にあたった医師たちと地域住民が中心になって創設された。私はその医師たちの1人である4年先輩の活動を約60年間見てきた。

このサ高住はJR東海道線南大高駅前にあり、近くに南生協病院と大型スーパーがある。1階に在宅診療所、ヘルパーおよび訪問看護ステーション、デイケア、小規模多機能居宅介護が、2階にメンタルクリニック、メンタルデイケア、歯科、居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)、はり・きゅう院が、3階はグループホーム18室があり、4~7階がサ高住78室である。

以前紹介した、柏市・都市再生機構・東大高齢社会総合研究機構の3者研究会の構想による柏市豊四季台のサ高住も、在宅医療・看護・介護のサービス拠点として、1階にクリニック、調剤薬局、居宅介護支援事業所、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護、グループホームがあり、2~6階に105戸(自立棟33戸、介護棟72戸)配された複合型である。

共に厚労省「地域包括ケアシステムの構築に関する事例集」で紹介されていて、地域包括ケア拠点型サ高住とも言える。併設診療所は地域住民の一般診療だけでなく地域の在宅医療も担っている。

先輩の医師は要介護の奧さんと2人世帯で、奧さんの介護をしながら病院の午前外来診療を週2回、4年間続けてきたが、介護で心身ともに疲れ、2人でサ高住に入居し、終の住処(ついのすみか)と決めた。夫婦部屋が空いてなく、別々の階の1人部屋に入ったが、行き来は自由だ。先輩の部屋はトイレ、洗面所付きの12畳ほどの広さで、ベッド、タンス、書棚、机が置かれていた。

コミュニティースペースもある施設

つくば市長の公約「待機高齢者ゼロに向けた地域密着型特別養護老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅の整備推進」では、特養ホームについては桜圏域と谷田部東圏域の2地域に整備されるようだが、サ高住に関しては施策が提示されていない。そこで、旧庁舎跡地に40~70戸の中規模サ高住の整備を提案したい。

市が土地を提供し、地域住民が出資者である生活協働組合(生協)あるいは農業後継者のためにJAが建設する方法はどうだろうか。生協は南生協がいい例であり、JAはジェイエイ兵庫六甲福祉会やJA山形市が参考になる。

つくば市のJAには、兼業農家の親のための複合型サ高住を作ってほしい。入所した老親には、診療所、ヘルパーおよび訪問看護ステーション、デイサービス、カフェ兼レストランなどが用意され、24時間いつでも医者か看護師に診てもらえ、近くの知人友人が気軽に来てくれるような施設を。

診療所には、総合診療医で、小児から高齢者、外来から在宅まで幅広く対応するだけでなく、介護・福祉資源とも連携、さらに健康教育・保健行政などの家庭医コース研修を終えた医師を迎えてほしい。筑波大総合診療科が協力してくれるかもしれない。

サ高住の1階に、医療介護サービスのほか、幼児の遊び場、児童館、メタボ改善教室、高齢者サロンなどに使えるコミュニティースペースを設ければ、地域づくりの拠点にもなる。(高齢者サロン主宰)

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