【コラム・先﨑千尋】環境自治体会議(代表幹事・山田修東海村長)が今年度で事実上幕を閉じる。先月、東京で開いた総会で、来年に環境首都創造ネットワークと一緒になり、新組織を立ち上げることを決めた。現在の会員は東海村、那珂市、ひたちなか市、古河市、行方市など30自治体。

同会議は、国連がブラジルのリオデジャネイロで環境開発会議(地球サミット)を開いた1992年5月に、ワインで有名な北海道池田町でスタートした。私はその時に、同町、沖縄県読谷村と共に開催の呼びかけ人になった。

環境自治体とは、「自治体のすべての政策分野で環境優先の考え方を取り入れ、地域において環境の視点に立ってまちづくりを推進し、同時に自らの活動において環境配慮を実現しようとする自治体」を言う。そして環境自治体会議とは、「自治体の首長が中心となって環境自治体づくりをめざしていくネットワーク組織」のことである。

地球サミットでは、21世紀に向けて持続可能な開発を実現するための行動計画「アジェンダ21」を採択した。これには世界が直面する環境と開発に関するあらゆる問題領域が含まれており、課題ごとに行動の基礎、目標、行動および実施手段を示して、誰が何をどのような手段でいつまでに実施するのかを明確にした、目標達成型の行動計画である。環境自治体のメンバーは、「ローカルアジェンダを策定し、市民の生活や地域社会をエコロジカルに変える」運動の先頭に立つことが求められる。

環境自治体会議 先進的事例も報告

会議では毎年1回、会員自治体の市町村で全国集会を開いてきた。参加者は、個性あるまちづくりや環境運動を展開している自治体の首長や議員、職員、研究者、市民運動家などで、首長も司会や報告者、助言者などを担当し、参加者は皆同列で議論した。意見がぶつかり合うこともしばしばだった。私は、第4回の大分県湯布院会議まで全体会の司会を担当した。

県内では古河市、東海村、行方市で開かれ、生ごみの減量やリサイクル、地域農業、霞ケ浦、水、地域交通、原子力、環境教育など環境に関するあらゆる問題をテーマとしてきた。その地域特有の課題やテーマもあるが、多くは先進的事例が報告され、学ぶことが多かった。ごみ一つとっても、水俣市の23分類などは現場まで見に行き、参考になった。

わが国の行政運営は、明治以降長いこと国が中心で、都道府県、市町村と縦系列だった。首長や職員、議員は隣の町でどんなことが行われているかを知らなくともよかった。環境自治体会議はそのような支配構造ではなく、横に手を結ぶ、隣の町の良いことをわが市にも採り入れる。そこに出かけて行き、学んでくる。

私が印象に残っているのは、北海道池田町、沖縄県読谷村、新潟県安塚町、大分県湯布院町、北海道斜里町、熊本県水俣市、秋田県二ツ井町など早い時期に開かれた全国大会で、参加する首長にエネルギーが満ちていた。会議だけでなく、夜の交流会で出される郷土料理や地酒も忘れられない。

自治体は4年に一度選挙があり、首長が代わると前のことを引き継がないことが多い。70以上あった加盟自治体が半数以下になってしまった。環境問題がこれからますます重要になってくるが、30年で一区切りということなのだろうか。私の学び舎が消えていく。(元瓜連町長)

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