【コラム・入沢弘子】5月末、当館お隣の土浦駅ビル「プレイアトレ」に待望の書店が開店。それも注目の「天狼院書店」です。同書店は出版不況の中でも、体験型書店という新しい形態で、続々と店舗をオープンさせている新刊本屋さんです。

大都市圏の展開だけと思っていましたが、土浦出店と聞き驚きました。プレイアトレの「コト発信」と「体験の共有」というコンセプトに合致したのでしょう。

駅から徒歩3分ほどの場所には、昔から親しまれているまちの本屋さん「マスゼン書店」と、関東最大規模の古書店「つちうら古書俱楽部」があります。本の好きな方には堪(たま)らない環境。これをまちの活性化につなげる方法はないでしょうか。

全国に目を移すと、本でまちの賑わいをつくる動きが増えています。2016年に青森県八戸市にオープンした「八戸ブックセンター」は、市が経営する書店として話題になりました。私も何度か私的に訪れましたが、通常の書店と異なる選書や分類方法でユニーク。「本のまち八戸」の中心拠点として、隣接する観光交流施設「はっち」や市民交流施設「マチニワ」とともに中心市街地の活性化に貢献しています。

関西では、17年に兵庫県明石市に誕生した「パピオス明石」が注目されました。JR明石駅前の再開発ビルを「本のまち明石」のシンボル施設とし、市立図書館と大手書店が入居することで駅前の通行量を増加させています。

図書館、新刊店、古書店が連携?

そして当館は…というと、開館1年半で87万人をお迎えしました。市役所移転との相乗効果で、周辺の通行量が平日で約8,000人、休日は約12,000人増加しました。

先日、つちうら古書俱楽部の佐々木嘉弘代表と懇談した際、「図書館からウチへ流れてくるお客さんが増えましたよ」とおっしゃっていました。近くの飲食店でも、「図書館帰りにランチにくる人多いよ」と言われました。微力ながらまちの活性化のお役に立っているのかもしれないと、嬉しくなりました。

そして駅ビルに書店が開店。知的好奇心を満たすには、土浦駅周辺は絶好の場所です。公共図書館が書店や古書店と連携し、本を通じてまちに賑わいをもたらすことが今後の目標です。(土浦市立図書館館長兼市民ギャラリー副館長)

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