【コラム・浅井和幸】犬と猫の保護や譲渡活動をしている団体は、茨城県内にもあります。その一つのNPOが運営しているシェルターに、週に数回のペースで、犬の世話のボランティアにうかがっています。私の場合、単なる犬好きが高じて、できる範囲で行っているので、大変どころか、そこの犬たちに会えることが生活の喜びの一つになっています。

東日本大震災のときに、福島の犬猫保護のために始まったこのシェルター。私は、不登校やひきこもりの方たちの活動の場になるかもしれないなという理由から、震災の次の年の初めぐらいから、少しずつ関わるようになりました。今では、福島から来た犬猫は、仮設住宅から次の住まいに移った飼い主のもとに帰り、県内で保護されたものがほとんどを占めています。

それまでは単なる犬好きでしたが、ドッグトレーナーが進める本を読み、インターネットで情報を集めながら、犬たちと接して勉強してきました。もともと学んでいた、人間相手の心理学やコミュニケーション方法が活かされた部分もありますし、犬たちと接することが、人間に接することへの学びにもなってきたと考えています。

そのうち、人を見ると震え出したり固まってしまう野犬や、人や犬を見ると唸(うな)ったり噛(か)んだりする、虐待されてきた犬と接することが多くなりました。その中で、たまたま上手くいった部分もあるかもしれませんが、脅(おび)える犬、危険な犬の扱いをお願いされることも増えてきました。

犬も人も心の動きに共通するものがある

私は人間への接し方が専門で、犬の方は全くの素人です。それでも、様子を見ながら接してみて、さらに様子を見て、こちらの対応方法に反映するというコミュニケーションは、心の動きには共通するものが犬にも人にもあると感じています。

先ほど、脅える犬と噛む犬がいると書きました。噛む犬は強気な犬だ、人間を馬鹿にしていると捉えられがちです。しかし、その様子を見てみると、やはり脅えているところがうかがえます。強気に吠(ほ)え噛む犬とみられている犬の中には、ビニールのガサッという音にびっくりしている犬がいます。

また、シェルターに新しい犬が入ったり、新しいボランティアがいると、挙動不審になったり、下痢をしてしまうという犬もいます。それらを観察すると、吠えるのも、噛むのも、怖いからだと捉えたほうが妥当だと感じることが多いのです。そう捉えられると、怖がらせないようにする距離の詰め方や信頼関係をつくる方法、安心感を与える接し方が工夫できるのです。

強気な犬は人間をなめているからという間違った解釈では、人間が上であることを教えてやろうと怖がらせたり、抑え込んだりしてやろうとしてしまうでしょう。そうすることは、それこそ犬の精神的な疾患やひきこもり状態をつくってしまうことに繋がります。

ドラマや小説のように短期間にパッと変化することもありますが、何年もかけてじっくり変わっていくケースもあります。スピードなどの程度の差はありますが、こちらのアプローチで変化があるのは、人も犬も同じなのだと日々感じています。(精神保健福祉士)

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